豊橋市議の長坂です。
新アリーナの建設費、高過ぎです。

さて、8月1日開催の市議会(委員会)にて、新アリーナ落札事業者の提案概要が示されました。
お金に関し、とても気になることが2つあります。
  • 建設費46億円増:184億(豊橋市見込)⇒230億(46億円増
  • 維持管理費(30年分)は0円 ⇒ 建設後に撤退されても、損害賠償請求できなくならない??
下記が提案事業者と資金計画です。
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入札額は市が上限としていた230.7億円と僅か300円違い
23,069,999,700円でした。

気になったのは、上から3つめ「割賦金利分(サービス購入料B-2)」約4600万円を除く、
ほぼ全額の230億円以上が建設費(設計・建設業務に係る費用)という点です。

豊橋市は昨年の市議会で230.7億円の算出根拠を
建設費184億円+維持管理費その他46.7億円としていました。
◎多目的屋内施設整備推進室主幹
 債務負担行為の限度額の算出根拠といたしましては、施設整備費(イニシャル)として、多目的屋内施設整備基本計画で示した多目的屋内施設の整備費150億円と、その他公園施設整備費34億円の計である184億円をベースに算出しています。
 維持管理、運営費についても、基本計画でお示ししました収支シミュレーションの手法をベースに、多目的屋内施設はBTコンセッション方式、その他公園施設はBTO方式として、30年間維持管理・運営を行った場合の事業費を試算し、さらに、PFI事業として必要となるSPC開業費・管理費や民間資金調達に係る割賦金利などの諸費用、物価変動等による増減額を加えた額を、債務負担行為限度額としております。以上でございます。

◆小林憲生委員
 お答えいただきました。基本計画で示されていた多目的屋内施設の整備費150億円、その他公園施設整備費の34億円、そこにそれぞれの事業費の諸費用を加えた金額と確認をさせていただきましたが、基本計画ではBTO方式での試算であり、計算上ではアリーナ整備150億円、その他公園施設整備に34億円、毎年の維持管理費を年数で掛けた金額が38.4億円で、合計222億4,000万円と基本計画からは計算ができます。
 今回、コンセッション方式で230億7,000万の予算が計上されておりますが、コンセッション方式であれば、基本計画から計算できる222億4,000万より減るのではないかと思うのですが、増えているのはなぜか、お伺いをさせていただきます。

◎多目的屋内施設整備推進室主幹
 債務負担行為額の算出に当たりましては、コンセッション方式の採用により、運営の自由度が上がり、民間事業者のノウハウを最大限発揮することで収益を増やし、収支の改善を図ることを想定する一方で、施設の維持管理にかかる光熱費について、近年の高騰分を加味するなど、より実勢値に近づけるように考慮したものにしております。
 また、特別目的会社(SPC)の開業資金や管理費のほか、SPCが金融機関から借入れすることで必要になる割賦金利の費用を加えるなど、PFI事業として必要になる諸経費が加わったことが、基本計画時からの増額の要因となっております。以上でございます。

> 豊橋市令和5年9月一般会計予算特別委員会 09月29日
https://ssp.kaigiroku.net/tenant/toyohashi/   
豊橋市が算出の前提としている基本計画の該当箇所は下記の通りです。
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240812_keikaku2_089
https://www.city.toyohashi.lg.jp/57267.htm 

豊橋市は約150億円の建設費(整備費)を
建設単価75万円/平米 x  延床面積20,000平米、としています。

事業者提案は21,188平米のため、
差の1,188平米 x 75万円 を加味しても8.9億円であり、
全体の46億円増とは大きな開きがあります。

現在建設中の愛知県新体育館(IGアリーナ)さえ
建設費約400億円に対し、延床面積は63,000平米のため、
工事単価は63.5万円/平米です。

なお、愛知県新体育館の設計は隈研吾事務所のため、
単価も高くなりそうな気がしますが、
それでも63.5万円ということです。

愛知県新体育館より10万円以上高い、
豊橋市の想定単価75万円/平米は、十分過ぎる額に思われます。

仮に46億円増を、豊橋市想定の新アリーナ150億円+その他施設34億円
の割合で計算すると、新アリーナ分の増は37.5億円。
この前提で単価を計算すると、
(150+37.5億円)/21,188平米=88.5万円/平米
となり、豊橋市想定よりも13.5万円増
愛知県新体育館より25万円も高くなります。

なお、愛知県新体育館も豊橋の新アリーナも建設のメイン企業は、
同じで、前田建設工業という会社です。

いくらなんでも建設費高すぎじゃないでしょうか。



そして、それ以上の不可思議は30年の維持管理費がゼロ円、というご提案。

一般論的に考えると、損害賠償が請求できるのは、契約金額の範囲内と思われます。
しかしながら、30年間の維持管理費ゼロ円という契約の場合、
もし建設後(維持管理期間中)に事業撤退されても
豊橋市は損害賠償請求をできないのでないか、という不安があります。

契約ごとにお詳しい方、下記に契約書の雛形(特定事業契約書(案))がありますので、
ぜひご意見お伺いしたく存じます。
https://www.city.toyohashi.lg.jp/58360.htm



昨夏の基本計画において、新アリーナ以外の施設(相撲場・テニスコート・陸上競技場など)の
年間維持管理費を約6900万円と、豊橋市は見積もっていました。
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これは現行の陸上競技場など既存施設の収支を前提に試算しているため、
精度高めな見積もりと思われます。

つまり、全体での維持管理費をゼロ円にするためには
新アリーナ単体で(あるいは有料になる駐車場の収入も加味してか)
この6900万円を上回る黒字が出せる、ということになります。

他方、先の6月市議会(定例会)にて、
1年前の基本計画策定時のBTコンセッション方式での収支予測は赤字
故に運営権対価をゼロ円と設定、旨の答弁をいただいています。

この答弁も嘘、あるいは基本計画業務受託の日本総研の試算が杜撰でなければ、
新アリーナ単体で、年6900万円以上の黒字、というのは相当難しく思われます。



では「建設費」名目で、事業者が先にお金を受領し、事業者でプールしておき、
それを切り崩して維持管理費に充てる、ということでないか、とも思われます。

しかし、入札の提案段階で、明確に「設計・建設」「統括管理」「運営」「維持管理」
と項目分けて、更に光熱費などの細項目まで分けて提案を求めている以上、
本当は維持管理費に充てるけど、建設費名目で受領」などの嘘は認められないかと。

別パターンとして考えられるのは、建設費名目で受領した資金を、
ネーミングライツを含むスポンサー料などとして、新アリーナの収入として迂回させる、
という手法でしょうか(これもNGに思われますが...)



今回の事業者提案、お金の面で非常に不可解です。
審査講評では、
市の維持管理・運営費の実際の支払いを発生させず、民間事業者の独立採算で行う事業スキームの提案など、BT+コンセッション方式の特色を活かし、民間ノウハウを最大限に活用した意欲的な提案をまとめられた応募者の提案力を審査委員会は高く評価する。
https://www.city.toyohashi.lg.jp/60672.htm 
としていますが、入札金額は僅か300円違いの上限いっぱいで、
結局その分、建設費が膨大に増えています。

まさか審査委員会が「木を見て、森を見ず」ということはないでしょうから、
審査委員会が高く評価された「応募者の提案力」が何か、全くわかりません。

では。