豊橋市議の長坂です。
山梨の信玄堤はブラタモリに登場しました。

さて、各校区で開催している市政報告会で、新アリーナの説明をしていると、何度か豊橋公園の朝倉川対岸、つまり上下水道局の近辺に新アリーナをつくるのはどうなのか、というご意見を度々聞きます。

この辺りです。

ご覧の通り、朝倉川の北側・水道局の周辺は農地です。
このご提案は、新アリーナの話が出始めた4年くらい前にもお聞きしています。



しかし、ここに新アリーナをつくることはできません。
「できない」というのは、建設技術の話でありません。安全面からです。
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このエリアは「霞堤(かすみてい)」として、豊川の増水に備えた遊水地としての機能があります。
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「霞堤」とは、意図的に堤防がない部分をつくっておき、川の水量が一定以上になったのときに、霞堤に水を逃し(逆流させ)、霞堤より下流の水量を抑える働きの治水方法です。
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霞堤の図|A-通常時,B-洪水時,C-洪水後
https://ja.wikipedia.org/wiki/霞堤

豊川には、このような霞堤が連続しています。
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図に赤色で示された、豊川の右岸側の霞堤は堤防が締め切られました。
一方、左岸側(黄色)の霞堤は、まだ残っています。

現在、最も下流にあり、豊橋公園に対している牛川の霞は、平成15年に機能しました。
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右下の建物が豊橋市役所、その奥に豊橋公園の野球場が見えます。
左側が浸水しています。

今年、2019年10月の台風19号では、賀茂の霞について、浸水のおそれが知らされました。
豊川の水位上昇に伴う賀茂霞地区への浸水について
http://www.city.toyohashi.lg.jp/40840.htm
このような想定リスクがあるエリアに、大規模な集客施設、防災拠点にもなるかもしれない公共施設を建設することは、認めがたいです。



霞堤の今後については、国土交通省の資料に次のように記されています。
(これまでの画像のこの資料からです)
豊川水系河川整備計画(平成13年11月28日策定)での霞堤対策については、(略)

最下流の牛川霞については、今後も地元豊橋市と土地利用計画等の調整を図りながら築堤により開口部を無くしていきます。

下条、賀茂、金沢の霞堤については、小堤の計画や土地利用規制等のソフト対策について、引き続き豊橋市・豊川市、地元関係者と調整を図り、事業を進捗してまいります。
http://www.cbr.mlit.go.jp/toyohashi/pamph/pdf/toyogawa_kasumitei.pdf 
最下流の牛川霞については、開口部をなくすことが記されています。
しかし、昨今の全国の水害状況を見ると、仮に堤防が築かれたとしても、敢えて堤防よりも低いところに新たな公共施設を作っていくのは、困難に思われます。



これが豊橋公園の対岸に、新アリーナをつくれない理由です。

治水・利水については、豊橋に限らず、本当に先人の知恵と苦労を感じずにいられません。

では!