豊橋市議の長坂です。
「八方美人」という言葉も使えなくなる日が来そうで恐いです。

さて、豊橋市が「SDGs未来都市」に選ばれました。
令和元年(2019年)7月1日(月曜日)、本市が提案した取組み「豊橋からSDGsで世界と未来につなぐ水と緑の地域づくり」によりSDGs未来都市に選ばれ、首相官邸において選定証が授与されました。

SDGs未来都市とは
SDGs未来都市とは、全国の都市(自治体)を対象にSDGsの達成に向けた取組みを公募し、優れた取組みを提案する都市を選定するものです。2019年度は本市を含めて全国で31都市が選定されました。

http://www.city.toyohashi.lg.jp/item/65937.htm 
豊橋市提供資料より。
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豊橋からSDGsで世界と未来につなぐ水と緑の地域づくり

-地域特性-
  • 環境への高い意識と行動力 / 530(ゴミゼロ)運動、全小中学校ユネスコスクール認定、世界首長誓約/日本
  • 豊川水系でつながる強い連携 / 東三河8市町村(東三河広域連合等)、官民連携(NPO、公益財団法人、学校法人、企業等)
  • 専門性の異なる大学の集積 / 包括連携協定の締結、環境・生命工学系の高い技術、食農環境教育、地域密着型教育
-課題-
  • 水道技術者不足への対応
  • 環境意識の更なる向上
  • 国際協力活動における期待への対応
目指す将来像
  • 豊川水系でつながる東三河地域の水環境及び森林環境が持続可能な活動や教育等により保全されている
  • 「現在から未来へ」「豊橋・東三河から世界(開発途上国)へ」水道技術が継承され、安全・安心な水が安定的に 供給されている
 〇豊川水系の恵みが受け継がれる都市
 〇環境保全意識が高く国際感覚に優れた都市
 〇開発途上国の水環境改善に寄与する都市
 〇グローバル経験が活かされた水道技術力の高い地域
10都市が選定された「自治体SDGsモデル事業」だと、上限3000万円の補助があったので、惜しかったです。



半年ほど前にこんなブログを書きました。
その後、残念ながら専門家からも「バイバイ地方創生」を後押しするような記事が。


表題に戻って、苦手なSDGsの八方美人さ。
SDGsって「良いこと」しか書いてないのです。

SDGsは17の開発目標(これがSDGs)と、それに紐づく169のターゲットから構成されています。

17の開発目標(仮訳)がこちらです。
目標1(貧困)
 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標2(飢餓)
 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。
目標3(保健)
 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
目標4(教育)
 すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。
目標5(ジェンダー)
 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う。

目標6(水・衛生)
 すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。
目標7(エネルギー)
 すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。
目標8(経済成長と雇用)
 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。
目標9(インフラ、産業化、イノベーション)
 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。
目標10(不平等)
 各国内及び各国間の不平等を是正する。

目標11(持続可能な都市)
 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。
目標12(持続可能な生産と消費)
 持続可能な生産消費形態を確保する。
目標13(気候変動)
 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。
目標14(海洋資源)
 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。
目標15(陸上資源)
 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

目標16(平和)
 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。
目標17(実施手段)
 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270935.pdf 
169のターゲットはこちらに。
https://imacocollabo.or.jp/about-sdgs/17goals/
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf 

ご覧のように正論しか書かれていません。ぐうの音も出ないほどに。



僕たちの仕事というのは、数ある「やらなきゃいけないこと」「やるべきこと」に、どのように優先順位を付けていくか、です。

しかし、SDGsは優先順位の付け方について、示していません

(追記:訂正します)
繰り返し書いてあったのは、このSDGsが「貧困の撲滅」のためのものであるということ。
そして、17の目標と169のターゲットは「統合され不可分」だということ、です。

SDGsの圧倒的最優先は「貧困の撲滅」でした。
(追記おわり)

実際には、
予算は限られている中、目標Aと目標Bのどちらを先にやるべきか。
目標Cを目指すと目標Dは低減され、目標Dを目指すと目標Cの実現は遠のく。どちらを優先させるか。

こういう状況の中で、何をやるべきか、何をやらないか、これを試行錯誤しています。

当たり前ですが、全部一度にできるだけの予算や能力があるのであれば、そうした方がいい。
でも、そんなのは夢見物語です。

国(日本)は「8つの優先課題」を上げています。
190701_actionplan2018_03
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2018.pdf
しかし、マークの数を数えればわかるように、元の17がほとんど網羅されており、本当に何が「優先」課題なのでしょう。



錦の御旗のように「SDGsに書いてあるから」と主張するのも良いです。
しかし、SDGsに記載ない地域特有の課題などが、疎かにならないか心配です。

その最たるものとして、人口減少/少子化/高齢化、があります。
世界のトレンドはまだまだ人口増加(人口爆発)です。

現在の日本の社会的課題は、人口の数と年齢構成に起因するものが多く、
その構造的な変革が急務です。

しかし、SDGsには、人口減少や少子化に対する直接的な言及は見当たりません。



また「あらゆる国」が対象であるため、残念ながらまだ国際的な評価の定まらない課題についても、言及が避けられているようです。

例えば、目標5に「ジェンダー」が設定されていますが、この中にLGBTなどセクシャルマイノリティーに対する記述はありません。
SDGsに書かれなかったLGBTの権利
https://www.joicfp.or.jp/jpn/2017/08/22/37867/

持続可能な開発目標(SDGs)で、ジェンダー平等の達成は目標5で掲げられている。しかし、LGBTはどこにも述べられていない。世界では同性婚が合法の国から、同性間の性行為に死刑を科す国まであり、共通目標に含むことができなかった
このような側面からもSDGsの八方美人さを感じます。



SDGsを天から振ってきた啓示やミッションのようにありがたがるのも良いですが、
その一方で、自分たちの足元にある本当の課題は何なのか。

それが試されているような気がしてなりません。

では!