豊橋市議の長坂です。
ブログでも度々触れていますが、過労死したNHKの佐戸未和記者は、学生時代の友人です。

雑誌「世界」の今月号特集「"KAROSHI"を過去の言葉に」の中で、
「未和 過労に奪われた31歳NHK記者の未来」という13ページの文章が載っています。
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世界 2018年 05 月号 [雑誌] [雑誌]
是非、多くの方に読んでいただきたいです。

さて、現在国会が開かれており、半ば勉強と思いできるだけ見るようにしています。
総理大臣は「働き方改革国会」としていることもあり、
まさか国会で友人の名前を度々聞くようなことになるとは、つい最近まで思ってもいませんでした。

深夜には、NHK予算に関する審議が録画放送されていました。
そんな中で、記者の「夜討ち朝駆け※」についての質問に対して、
監督官庁の野田総務大臣が次のような答弁をしていました。
私は記者クラブと話をして、朝夜に来てもスペシャルな情報は話しません、として(担当記者に夜討ち朝駆けをしないよう)理解を得ました。
あぁ、これはすばらしいことだなぁと。
「夜討ち朝駆け」とは、
川人弁護士は、シンポジウムで、その働き方について警鐘を鳴らした。

「メディアでは夜討ち朝駆けなど、早朝から深夜まで働くことが慣行とされており、休日労働も頻繁にある。これらが本当に必要不可欠な労働なのかなども踏まえ、見直しが迫られているのではないでしょうか」

夜討ち朝駆け」とは、深夜と早朝に取材先の自宅などを訪れ、情報を集める取材のこと。日本のマスコミでは、一般的な手法だ。

 - 「当選確実」を報じるため、過労死した娘。記者の「夜討ち朝駆け」は必要なのか?
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/nhk-inochi
学生時代のつながりで記者が何人かいますが、新米記者は警察担当(通称・サツ担)というのが、よくあるケースということです。つまり、この場合の取材対象は、警察官など。捜査状況などを聞き出すために「夜討ち朝駆け」するのです。



では、捜査担当者は取材に来た記者に、捜査状況を話してもよいのか?
意図的に記者をコントロールするために使われるのが「リーク」だ。リークとは、秘密の情報を漏らすこと、つまり意図的な情報漏洩だが、特定の記者に“貸し”をつくるという効果があると同時に、警察捜査に対する世論づくりにも使われる。

元特捜検事の前田恒彦氏はこう指摘している。「リークやそれに基づく報道の一番の問題は、報道内容が独り歩きし、それがあたかも『真実』であるかのように、捜査当局のみならず、社会一般の間でも『既成事実』となってしまうという点だ。 現場にさまざまな重圧がかかって捜査が誤った方向に進んだり、後に引けなくなるといった危険性も出てくる。 捜査当局の幹部がマスコミにリークをして報道させた内容が実は誤りだったということになると、その幹部のみならず、マスコミの責任問題ともなる」。なお情報漏洩は地方公務員法(守秘義務)違反でもある。

 - 警察とマスコミ、偽らざる「不適切な」関係 なぜ記者クラブは警察批判ができないのか|東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/161573
つまり、リークは違法行為。

「森友」案件についても、新聞のスクープなどについて、その情報源がどこかという議論もあります。そんな中、国会議員の江田憲司さんが、

「大阪地検の女性特捜部長のリークがどんどん出てくる」

と、個人をほぼ特定できる形でツイート。
https://twitter.com/edaoffice/status/981477993515171841

まだテレビ・新聞などの大きなニュースにはなっていないようですが、ネットではかなりのインパクトを与えています。



ここで冒頭の雑誌「世界」から引用します。
最初の赴任地はNHK鹿児島放送局に決まった。

報道記者の人生はサツ回りで始まることが多い。自分の顔と名前を覚えてもらおうと、サンドイッチマンの出で立ちで現れた未和さんを迎えた人がいる。鹿児島南警察署の捜査主任っだった(略)

「当時、私は月に4,5回当直がありました。ある日その部屋に、プラカードを首から下げた女性がやってきました。そこには大きな文字で、『NHK記者 佐戸未和』と書いてありました。そのとき私は、『ああ、NHKもこういうことをするんだ』と思いましたね。未和さんはとにかく一所懸命さがほかの記者と違って、人の3,4倍質問していました」
美談のように書かれていますが、ぼくはこの下りを見たとき衝撃を受けました。
更に、同じ鹿児島時代の別の記事です。
警察の人と飲むときは、話の内容を忘れないようにお酒をあとから吐くんだよ

鹿児島に赴任していたころ、佐戸さんはそんな話を恵美子さんにしていた。

取材先との酒に付き合うことが多かったが、そこで得た情報を忘れずすぐ報告できるよう、宴席後は酔いを冷ますために喉に指を突っ込み、トイレで吐く。それを日々、繰り返す。

いつの間にか、その指には「吐きダコ」ができていた、という。

深夜や早朝に取材先の自宅を訪問し、情報を得る「夜討ち朝駆け」では待ち時間が多いため、膀胱炎になったこともあった。

 - 過労死した娘は、結婚を控えていた。奪われた記者の命とその未来
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/nhk-inochi3
捜査情報を聞き出すためにここまでする。
警察がその情報を出すことはリークであり、違法行為かもしれない。

「リーク」という違法行為も、その違法行為を求める取材も、
「働き方」を変えるために、この機会に考えなおせないだろうか。

そんなことを考えていた中、野田総務大臣の対応、
私は記者クラブと話をして、朝夜に来てもスペシャルな情報は話しません、として(担当記者に夜討ち朝駆けをしないよう)理解を得ました。
は、すばらしいと思った。
捜査機関も報道機関も、このやり方に倣うことができないでしょうか?

では。