事件当日26日(火)夜、こんなブログを書きました。
相模原事件、なぜマスコミは被害者情報を伝えないか - 愛知豊橋・長坂なおと のblog公開後、次の記事を見つけ、被害者情報を出していないのは、警察の判断とわかりました。
http://nagasakanaoto.blog.jp/160726.html
神奈川県警は26日、事件の被害者の名前を公表しない方針を明らかにした。翌27日(水)未明に、地元紙・神奈川新聞にこのような記事が掲載されました。
殺人などの被害者は公表するのが通例だが、今回の事件について県警は「(現場の)施設にはさまざまな障害を抱えた方が入所しており、被害者の家族が公表しないでほしいとの思いを持っている」と理由を説明している。
相模原殺傷:神奈川県警、被害者の実名「発表しない」 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160727/k00/00m/040/133000c
県などによると、死亡した19人は19~70歳の男女で、多くが2階建ての居住棟内で見つかった。 男性は西棟の1階で2人、2階で7人、女性は東棟の1階で10人。 職員を含む26人の負傷者は北里大病院(同市南区)など県内外の6病院に搬送された。さすが地元紙、この時点では最も詳しく書かれていたひとつと思います。
19人刺殺、26人負傷 相模原障害者施設殺傷
http://www.kanaloco.jp/article/188415 #神奈川新聞
ここからわかったのは、19人の死亡者は全員入居者、男性9人・女性10名。 負傷者の中には職員もいる、ということです。
■
警察から名前が出ないことについて、一部のジャーナリスト・記者がTwitterで「個人の意見」を述べています。
綿井健陽氏(映像ジャーナリスト)
WATAI Takeharu/綿井健陽@wataitakeharu
相模原の事件、犯行の態様や、容疑者の「言動」「動機」に愕然としますが、死傷者の名前や顔が、「一律に」「一人も」報じられてないことに(これを書いている時点で)、別の「異常さ」を感じています。報じられないその「理由」に、社会がもつ何かが https://t.co/v2blBW8HXO
2016/07/27 00:09:30
WATAI Takeharu/綿井健陽@wataitakeharu
どんな事件であっても、「うちは顔写真は出さない」「今回は名前は伏せる」という姿勢を出すメディアがあっていいと思います。しかし、すべてのメディアが「一律に」「足並みをそろえる」という点が、日本のメディアでいつも気になるところ。みんなで殺到、みんなで自粛、それがいちばんダメな報道。
2016/07/27 00:22:48
WATAI Takeharu/綿井健陽@wataitakeharu
相模原の事件で殺害された人たちの名前の公表について、いろいろ考えています。『新聞研究』日本新聞協会(2002年11月号)に掲載された玉木明氏の寄稿「ひとりひとりの死」を読み返しました。詩人の石原吉郎氏の文章からの引用が中心です。 https://t.co/OTfYwk9raL
2016/07/27 03:31:53
澤康臣氏(共同通信記者)
Yasuomi SAWA 澤康臣@yasuomisawa
深い議論が必要だけれど「この人たちを見てはいけない、見ないようにすべきだ」とのメッセージになってしまうことを憂慮する。先にTWしたNYタイムズの被害者報道も思い出した 相模原殺傷:神奈川県警、被害者の実名「発表しない」 - 毎日新聞 https://t.co/nGBFjkXLM1
2016/07/27 11:51:14
渡辺志帆氏(朝日新聞記者)
渡辺志帆 Shiho Watanabe@shiho_watanabe
神奈川県警「現場が障害者の入所する施設で、氏名の非公表を求める遺族からの強い要望があった」→匿名発表だと、被害者の人となりや人生を関係者に取材して事件の重さを伝えようという記者の試みが難しくなります。https://t.co/mhTpyjPn8X
2016/07/27 14:54:25
渡辺志帆 Shiho Watanabe@shiho_watanabe
補足です)記者は、報道被害を生まないよう十分気をつけつつ、社会で起きた事件を正確に記録し人々に伝えようと努めています。被害者・遺族の意向を顧みないでいいとか、匿名では事件が軽くなると言うつもりはありません。とてもデリケートな問題ですが、議論が深まればと思います。
2016/07/28 04:20:21
■
更に、翌28日(木)に朝日新聞が、実名で記事を書きました。
(上記の渡辺記者とは、違う方の記事です。)
但し、負傷者のひとりであり、犠牲者ではありません。
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」であった事件で大けがをした野口貴子さん(45)の両親が28日、朝日新聞の取材に応じた。■
娘が重傷の両親「いま、どん底です」 相模原の殺傷事件:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASJ7X36TLJ7XUTIL005.html
週末になると、実名が出ないことについて、各紙が取り上げるようになります。
殺人などの被害者は公表が通例だが、警察は今回は遺族全員が配慮を求めているとする。 失われた命の重みが伝わらないとして公表を求める声が上がる一方で、遺族の要望の背景には根強い社会的な障害者差別がある、との指摘もある。 どう考えるべきか。
相模原の障害者施設殺傷:被害者氏名、県警公表せず 「プライバシー保護」 「忘れられる恐れも」 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160729/ddm/041/040/123000c
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、神奈川県警は犠牲者やけが人の氏名を公表していない。 当事者たちの思いは複雑だ。
胸を刺されて入院中の森真吾さん(51)の母の悦子さん(79)=相模原市緑区=は、津久井やまゆり園で16年前に開かれた運動会で笑顔を見せる真吾さんの写真を取り出した。
差別や偏見に苦しんだ、それでも 相模原殺傷、匿名葛藤:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASJ7Y5HGCJ7YUTIL04N.html
戦後最大級の犠牲者を出した殺人事件にもかかわらず、「誰が亡くなったのか」という事実確認に障壁を設け、被害者の足跡や遺族の思いなどを世に伝える機会を奪った形だ。 障害者団体は「逆に障害者への差別になっていないか」と批判、メディアの専門家も対応に疑問符を付けている。■
(略)産経新聞は29日付で、けがを負った被害者の家族を取材し、実名で報じている。
相模原殺傷 被害者匿名、疑問の声 県警が非公表 障害者団体「差別では」(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160731-00000056-san-soci
そして、31日(日)の夜、NHKが、都知事選の開票特番に挟まれるような形で、この事件をNHKスペシャルで取り上げました。
nhk_special@nhk_n_sp
26日未明、相模原市の知的障害者施設に刃物を持った男が侵入。入所者を次々と刺し、19人が亡くなり26人が重軽傷を負いました。なぜ男は凶行に及んだのか、新証言で浮かび上がらせます。「調査報告 相模原・障害者殺傷事件~19人の命はなぜ奪われたのか~」
2016/07/31 18:30:32
#NHKスペシャル 今夜9時です
NHKスペシャル | 調査報告 相模原・障害者殺傷事件~19人の命は なぜ奪われたのか~番組中では、被害者の写真や家族が登場しました。実名の方もいました。
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160731
被害者(家族)を、テレビで見たのは、これがはじめてでした。
しかし、いずれも負傷者であり、死亡者ではありませんでした。
■
そして、事件から1週間が経った8月2日(火)、はじめて遺族の言葉を見つけました。匿名です。
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、亡くなった女性の家族が朝日新聞の取材に応じ、「彼女なりに一生懸命生きてきた。絶対に許せない」と語った。事件は2日で発生から1週間となる。この遺族は、実名・匿名について、次のように述べています。
犠牲の姉「一生懸命生きてた」 相模原殺傷、無念の遺族:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASJ815G0VJ81UTIL03L.html
男性と次男は匿名を条件に取材に応じた。 負傷者の家族が名前を明かして思いを語る報道に触れ、次男は悩む。 「実名を出した方がいいだろうか。自分は姉の60年の人生を否定しているのか」。 家族とも相談した。 「自分勝手かもしれませんが、取材を受けるたびに姉のことを話さなければならないと思うと、感情が高ぶって耐えられない」と話した。■
現状を整理すると、
-警察は、死亡者だけでなく、負傷者も含め、実名を出していない。
※前出の7月30日付け朝日新聞によると、「神奈川県警は犠牲者やけが人の氏名を公表していない。」
-しかし、一部の負傷者については、報道判断や、当事者(家族)の許可を得た上か、名前を出している。
-一方で、死亡者については、名前を出している記事は見当たらない。
■
既に事件から10日が経っており、匿名では遺族の言葉が出てきていることから、各紙記者が未だに全く犠牲者の名前を把握できていないとは考えられません。
ここで改めて、冒頭の綿井健陽さんのツイートを。
WATAI Takeharu/綿井健陽@wataitakeharu
相模原の事件、犯行の態様や、容疑者の「言動」「動機」に愕然としますが、死傷者の名前や顔が、「一律に」「一人も」報じられてないことに(これを書いている時点で)、別の「異常さ」を感じています。報じられないその「理由」に、社会がもつ何かが https://t.co/v2blBW8HXO
2016/07/27 00:09:30
被害者情報を伝えないのは、「警察が出さないから、知ってるけど、名前を出さない」という判断を、すべてのメディアが「一律に」しているからでしょうか。WATAI Takeharu/綿井健陽@wataitakeharu
どんな事件であっても、「うちは顔写真は出さない」「今回は名前は伏せる」という姿勢を出すメディアがあっていいと思います。しかし、すべてのメディアが「一律に」「足並みをそろえる」という点が、日本のメディアでいつも気になるところ。みんなで殺到、みんなで自粛、それがいちばんダメな報道。
2016/07/27 00:22:48
では。



