先日、このブログでも触れた原稿が、ようやく形になりました。
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『毎日フォーラム』は毎日新聞社が発行する月刊誌です。
「官と民」「中央と地方」の架け橋となる政策情報誌として、国会議員や中央府省の幹部、全国の都道府県、市区町村の首長と幹部、在京外国使館、大手民間企業の幹部職員らに幅広く読まれています。
 - http://gendai.ismedia.jp/category/mainichi
目次
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まさかの上から三番目。 ありがたい。

記事。
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僕の文章はこの見開き2ページのみですが、こうやって形になると感慨深いです。 世の方々が、儲けが少なくても、本を書きたがる気持ちがよくわかります。

ちょうど、発刊日に東京にいたので、会社訪問してきました。
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原稿ご依頼くださった、編集の方と。(こういう写真、撮ってみたかった)

この見出し、◇行政と市民 「与える−与えられる」関係から脱皮を は、この編集の方が付けてくださいました。 この方からは、「実に面白い原稿です。こんな面白い原稿はなるべく多くの人に読んでほしい」「たぶん、この特集で、これまでで最年少の執筆者だ」というありがたいお言葉もいただきました。



今回のご縁は、11月に東京で下記の講演をさせてもらったとき、この編集の方が私の話をお聞きくださっており、そこからご依頼いただいたという縁。 講演企画してくれた、たかちゃんこと、井上貴至さん、ありがとう!
地域づくりは楽しい~地域のミツバチ.井上貴至の元気が出るブログ~ 
 - これから何かをやろうとする人へお薦めの「ひとりテレフォンショッキング」 http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68262361.html

 - 敢えてイベントはやらない。人が集まる場所を創りたい!敏腕商店街マネージャーが取り組むこと。 http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68266218.html
そして、本日ネットでも文章が公開されました。
僕も結構気合い入れて書いたので、多くの方に読んでいただきたいので、是非ご笑覧ください。
- ◇行政と市民 「与える−与えられる」関係から脱皮を|毎日フォーラム・視点:豊橋に日本一の図書館をつくろう委員会委員長 長坂尚登 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/feature/news/20150204org00m010050000c.html
この原稿はこうやって書きました。

 - 原稿の書き方 - 愛知豊橋・長坂尚登のblog http://nagasakanaoto.blog.jp/150116.html

では!


毎日フォーラム・視点:豊橋に日本一の図書館をつくろう委員会委員長 長坂尚登

◇行政と市民 「与える−与えられる」関係から脱皮を

 私の地元は「おもしろい人が日本一集まるまち」愛知県豊橋市です。私は「豊橋に日本一の図書館をつくろうプロジェクト」を展開しており、その活動を通して「地方創生」について考えています。地方創生とは自治体間の競争と考えます。いかに選ばれ、住まわれる地域になるか。つまり、自治体の差別化です。しかし、この差別化は、これまで横並びマインドであった行政組織・職員にはかなり難しいと痛感しています。

 豊橋市は新しい図書館を2020年の完成を目指して計画しています。5年後にはおそらく、今の担当職員は全員異動するか定年退職するかで担当から外れているでしょう。市長も変わっているかもしれません。

 横並びの図書館を作るなら、これでよかったかもしれません。しかし「差別化」です。「日本一の図書館」です。ありきたりなものを作る方が楽な仕事で、摩擦も少なく、失敗の可能性も低いため、そちらに流れがちです。そして、その仕事を完成まで見られないため、熱意も持ちにくい。自治体組織・人事制度は「長期」の「新しい」ことをするには不向きです。短くとも開館後1年程度までは、担当であることが決められた公募館長なり、特命職員を決めてほしい。そして、その人に決める権限と責任を持たせてほしい。間違っても「みんなで決めました」などと言わないでほしい。

 「差別化」のためには、強いコンセプトが必要です。「母になるなら、流山市。」行政関連のコピーで、私が最もしびれたものです。たった11文字で、千葉県流山市がどこを目指し、誰のためのまちづくりをしていくか、はっきりと分かります。コンセプトを決めることは、ターゲットを決めることです。ところが「みんなのため」の行政は、この点が圧倒的に弱い。「緑いっぱい、笑顔あふれる町」など、耳に心地よくても誰の方も向いていない言葉が「コンセプト」としてまかり通っています。「公共施設だから特定の人をターゲットにできない」と言う人がいます。しかし、豊橋市では7年前に「こども未来館ここにこ」という施設ができました。名前から明らかなように、子どもと子育て世代をターゲットにしています。公共施設には珍しく、当初計画を超える来場者で、地元での評判もとてもよいです。やればできるのです。

 新しいことを始めるには、外部の、特にプロフェッショナルの知見が欠かせませんが、行政は、外の知見を取り入れるのが下手です。私が、何か新しいことを始めるとき、自分で頭を抱えずに、まず詳しい人に聞きます。これが当たり前と思っていたのですが、なぜか行政組織は内製で済ませたがります。「電話でちょっと聞く」ということにもおっくうです。そして、自身の力量を過剰評価しています。「豊橋筆」という伝統工芸品があります。この筆を何とかしようとしていた担当課に、東京で自身のブランドも持つ工業デザイナーを紹介したことがありました。その方は、豊橋出身で「何か地元に貢献できることがあれば」と話していた人ですが、担当者から「自分たちでやるから」と袖にされました。これが本当に豊橋筆のためになるのでしょうか。

 更に、審査委員問題もあります。例えば、新図書館のハードとソフトデザインの発注。専門家ではない地元の有力者、地元団体の代表、地元大学の先生、5年後には引退している職員という、オール地元の名もなき「有識者」で固められても、第一線の人たちは、そんな自治体に見向きもしません。審査委員は選ぶだけじゃない。応募する側も審査委員を見て、選んでいます。応募にもすごく労力がかかる。そして、落ちたら1円にもならない。だから、ちゃんと見る目があり「この人が審査してくれるのならば」というところにしか出しません。引っ張りダコの人たちは、仕事する相手をちゃんと選ぶ。いい仕事のためにはまず、審査委員の名前で応募が殺到するような、その道の現役プロフェッショナルを審査委員にすべきなのです。審査委員にしても、外部人材にしても、自分たちの許容範囲内に収まりそうなところにしかお願いせず、小さくまとめようとする感じを受けます。

 また、新しいことに失敗はつきものです。むしろ失敗に、いかに臨機応変に対応していくかが重要です。しかし、行政の計画ではいつも失敗はゼロ見積もり。状況に合わせず、突き進んで行きます。行政組織には、失敗についての検証・自省機能がありません。地方創生について「まち・ひと・しごと創生本部」が、過去の失敗事例について集めようとすると、全省庁から「ゼロ」という回答だった、という笑えない話も出てきています。そのため「あのまち、このまち失敗事例 墓標シリーズ(一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス)」や「地域おこし協力隊『失敗の本質』(村楽LLP/全国地域おこし協力隊ネットワーク)」といった現場からの失敗事例資料が注目されています。

 しかし、これほど意固地に失敗を認めないのは、失敗を許容しない私たちにもその一因があります。失敗しない誰にでもできることだけやって他と同じようにゆるゆると衰退していくか、失敗可能性も受け入れ新しいことに挑戦するか。私はまだ先が長いので、挑戦する自治体を望みます。他にも私たちが意識を変えないといけないことがあります。それが「与える与えられる問題」です。

 新図書館について豊橋市主催の意見交換会でのことです。市は「はじめに市民の意見を聞こう」と、計画作成前にこの会を開きました。ところが、こんな意見がありました。「何もないのに、意見を聞かれても困る」。しかもちょっと怒り気味で。そういう方はきっと、ある程度決まった段階ならこう言うのでしょう「こんな計画いつの間にできたんだ、何も聞いてない」。私はこれを「与える与えられる問題」と呼んでいます。行政と住民が「与える−与えられる」関係に慣れてしまい、住民は受け入れるか、批判するだけ。提案しましょう。これから作る計画なので、今なら何を言ってもいい。「お酒を飲みながら読書」「寝っ転がれる」「おしゃべり図書館」「遊べる図書館」−−。みんなの図書館だから、計画も一緒に作る、という姿勢の大切さを痛感しました。

 こんな体たらくで、果たして豊橋に日本一の図書館はできるのか。私はできると思っています。実は「おもしろい人が日本一集まるまち」も、ふと私が思いついて、約4カ月前から言いふらし始めました。それが不思議なことに、早くも集まり出しています。きっとこれを読んでいる皆さんも、今ちょっと豊橋に来たくなり始めています。同様に私が「日本一の図書館をつくろう」と言い始めてから、今、図書館業界で豊橋が注目され始めています。ぜひ豊橋に来てください。何にもない豊橋ですが、私を訪ねてくだされば、熱烈歓迎いたします。