先日、市長にお会いしたとき、下記の私案をいっしょにお渡ししました。 これまで僕は、広くいろんな意見やアイデアを聞きたかったので、新しい図書館について、自身の意見やアイデアを言うことを控えていました。 それは、僕が特定のことを言うと、議論がそれへの賛成/反対になってしまうためです。

今回、市長にお会いするにあたり、僕なりのこれまでの「まとめ」を作成するか、考えました。 考えた末、私案として、僕なりのコンセプトを作成することにしました。 たぶんお読みになれば驚くと思います。 これまで先駆者の方々にご講演いただいた内容、たくさんの方々からお聞きしたご意見やアイデアは、ほとんど書いてありません。 これは多少の勇気が入りました。 でも、新しいコンセプトをつくるってこういうことなんです。

読んだこと、聞いたことを一度全て消化し、反芻し、血肉とした上で、じゃあ、その先は何なのか。 まだ発展途上のコンセプトですが、ご笑覧いただければ幸いです。
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平成26年10月15日
長坂 尚登
 
『未来をつくる図書館』
豊橋まちなか図書館 コンセプト(私案)

豊橋にできる ”日本一の図書館” を考えるにあたり、これまでの図書館の概念を覆すものは何かと考えた。 今や必要な情報は、図書館にいかなくても、インターネットの検索窓がほとんどのリクエストに応えてくれる。 インターネットを含めた「情報」を超えるものが、新しい図書館で提供できないか。 今、アクセスできる情報というのは、全て『既知』のものである。 もし『未知』に触れられる図書館があったら・・・、それはきっと全く新しい図書館の概念と魅力を持つ。 それはつまり半歩先の『未来』に触れることであり、このコンセプトに至った。

1. 暗い未来を直視し、危機感を育む:
予測される未来の課題・社会問題を真正面から捉える。 それは例えば、人口減少社会における、世界の中の日本、そして、自治体間競争での豊橋について、真面目に考えるきっかけを提供することである。 豊橋は恵まれた地域である。 ぬるま湯の豊橋でゆでガエルになってしまう前に、早く危機感を育む必要がある。 「多くの人は、見たいと欲するものしか見ない」、古代ローマ・カエサルの言葉だ。 このように、問題を先送りして来たから、今大変なことになりつつある。 暗い未来を真正面から見せること、それが、明るい未来をつくる第一歩になる。 自分が気づいていなかった問題にちゃんと気づかせてくれる、そんな図書館。

2. ちょっと先の明るい未来に触れる:
最先端の科学技術やデザインに触れ、明るい未来を想像できる。 現在、文字化された情報は、全国どこでも大きな時間差がなくアクセスできるようになった。 しかし、テクノロジーやデザインなど、地方ではなかなか最先端に触れる機会がない。 この積み重ねの差が、都市と地方の人の差に繋がっていると考える。 このような最先端に触れる機会を提供したい。 例えば、大学や企業と連携して、試作品モニター調査の場を図書館が提供し、開発中の技術に利用者が触れることも。 先端機器の展示会、デザイン展のようなものは今、東京に行かないとない。 そんな展示会に出される前の試作品など、つまり半歩先の未来に豊橋で接する機会を、特にこれからの未来をつくる青少年に提供したい。
また、折しもノーベル賞のシーズンだが、例えば、受賞した研究の図書特集を今やっているのは遅い。 受賞対象になるような研究は、何十年も前のもの。 もしノーベル賞の特集をやるなら「数十年後のノーベル賞かもしれない現在の最先端」の特集をする、そんな図書館。

3. 明るい未来をつくる「年功逆列」:
未来をつくるのは若い人、そして、子ども。 これは紛れもない事実だ。 あとから来る者のために、今、自分に何ができるのか。 子どもが泣いていても怒らない、イヤな顔をしない。 中高生が一生懸命勉強していたら、静かにする。 全ての利用者が、自分よりも弱輩者のことを考え、人生の後輩に優しくする。 これが唯一つのきまりごとになるような。 そして、振り返ったときに「今の自分があるのは、あの図書館と、周りの人たちがあったから」そう思ってもらえる、そんな図書館。


※NGワード: 「交流」「文化」「創造」「居場所」「コミュニティ」「拠点」「知」「情報」「IT」「ICT」「大人の」「ビジネス支援」など

新しい図書館のコンセプトに、使うことを避けたい言葉。 まちなかに新しくできる図書館は、図書館3.0でなくてはならない。 昨今の話題の『滞在型』『交流型』と呼ばれる図書館が、図書館2.0であるとしたら、まちなか図書館ができる5年後、図書館2.0は当たり前になっています。 上記のNGワードは、図書館2.0のコンセプトによく使われている言葉です。 5年後、これらの言葉は陳腐化されています。 例えば、「誰でも自由に本を借りられる図書館」と、当たり前のことをわざわざ明言するように。 それを見越し、新しいまちなか図書館は全く違う切り口のコンセプトを考える必要があります。 
 
以  上


いかがですか?

どちらかというと、重要なのは、※NGワード 以降の考え方です。

どうやってこのコンセプトをつくったかというと、まずはじめに、※NGワード を考えました。 そこから、既知⇔未知という切り口を、そしてそこに僕が普段から豊橋に感じている思いを混ぜました。

僕はこのコンセプトに強いこだわりがあるわけでないので、これを書き上げた今でも、「新しい図書館ってなんだろう」「図書館3.0ってどんなだろう」と、これを上回るものを毎日考えています。 だから、みなさんにも、「滞在型」「交流型」の先にある図書館はどんなか、是非、妄想を膨らませてみてほしいです。

では!