地元・豊橋には、ビンカンボックス、という非常に便利なシステムがあります。
ビンカンボックスとは
資源の再利用とごみ減量を推進するために平成3年度から設置を開始し、 現在、市内に約3,500基が設置されています。設置は、概ね30世帯に1基を目安とし、場所や基数は自治会の意向に基づき設置しています。
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 ビンカンボックス/豊橋市  http://www.city.toyohashi.lg.jp/7390.htm
曜日・時間に制限されず、いつでも捨てられるというのは、利用者からすれば、とても重宝します(近所の迷惑(特に音)なるので、夜間・早朝の利用は控えましょう、ということ)。 僕はこのビンカンボックスが当たり前の環境で育ったため、東京で暮らしているとき、ビンカンボックスがないと知って驚きました。 調べるとどうも全国で豊橋唯一のもののようで(豊橋すげー)。 そして、東京の自宅には、どんどん、ビンカンが溜まりました・・・



そのビンカンボックスについて、こんな記事を最近見かけました。
とてもいい記事だと思いました。以下、引用です。
 【愛知】資源持ち去り禁止でホームレス困窮 豊橋 2014年5月24日

 豊橋市が、ごみ集積場の「ビンカンボックス」から空き缶や空き瓶の持ち去りを禁じる条例を施行し、半年が過ぎた。予想通り、これまで「空き缶集め」を収入源としてきたホームレスは困窮している。資源ごみが増え、市に歳入増をもたらした一方で、新たな課題も浮上している。
 「ここで朝飯を食べたら、後はなにもすることがないよ」
 二十三日午前八時。豊橋駅前で、ホームレスの支援者らによる炊き出しのおにぎりを食べながら、六十代の男性はつぶやいた。
 市内で路上生活を営む男性は昨年十月の「持ち去り禁止条例」の施行後、空き缶の収集をやめた。それまでは集めた缶を駅近くの公園にまとめていたが、地元の自治会員に「これからは置かないでほしい」と言われ、条例の施行も知らされた。
 浜松市内の町工場で三十年ほど働いていたが、十年ほど前に職を失い、豊橋に移ったという。早朝から市内を歩き回り、「ビンカンボックス」を数十カ所巡ってアルミ缶を袋に詰め込んでいた。
 集めた缶を市内の金属回収業者のもとへ運ぶと、一キロあたり百十円前後で買い取ってもらえ、月に一万~一万五千円ほどの収入になった。
 昨年十月以降は、毎朝、炊き出しの食事と飲み物を口にし、日中は体力を使わないように、横になって時間をつぶす日が続く。「生活の糧だから、何とか元のルールに戻してほしい」と語った。
 別の六十代男性も、市職員から口頭注意を受けて缶集めをやめた。「自動販売機の下に小銭が落ちていないか探すこともある。仲間たちが窃盗や万引に走らないか心配だ」と漏らす。
 男性らが缶を持ち込んでいた業者の男性(63)は「『ボックスから取った』と言われれば買い取れないが、『違う』と言われれば、たとえそうではないと知っていても買い取るよ」と打ち明ける。以前は月に四、五十人がアルミ缶を運んで来たが、今はその十分の一ほどだ。
 男性は「僕たちの世代は『生活保護を受けるのは恥』という意識が強い。一日中はいつくばって働いて、缶を集めてもせいぜい二千円。それを認めないのはおかしいと思う」と話した。

◆市担当者「福祉部門と連携」
 豊橋市内にはビンカンボックスが二千百六十七カ所ある。市によると、条例施行後の半年間で集めたアルミ缶をプレスして売却した量は、前年同期比で六割強増、売却額も七百六十六万円増えた。
 条例に違反し、缶や瓶を持ち去ると、口頭注意、警告、勧告や命令の対象となる。命令後も持ち去った場合、市は刑事告発(罰則は二十万円以下の罰金)も検討する。
 市は昨年十月から二人一組でパトロールを行い、延べ九十三人を口頭注意、警告、勧告した。命令は出していない。
 市環境部業務課の藤井浩主幹は「生活困窮者の違反を見つけた際には、生活保護の受給を促すなど、福祉部門との連携を進める」としている。
 (西田直晃)
 
 <持ち去り禁止条例の県内動向> 2005年4月に施行した東浦町を手始めに、17市3町(豊橋市を除く)が条例を制定している。豊橋市と同じく10万~20万円の罰金刑を定めた自治体のほか、豊川市や蒲郡市などでは5万円以下の過料(国または自治体が科す金銭罰)と定めている。

中日新聞:資源持ち去り禁止でホームレス困窮 豊橋:愛知(CHUNICHI Web) http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20140524/CK2014052402000057.html
感想。 結論から先に言うと、行政の対応は正しい。 そして、その上でどうするのがよいのかは、まだ僕もわからない。 

このように缶集めをしている方々は、僕が小学生のとき、つまり20年ほど前からいた。 20年、そのままでいたことがなぜ今になってこのような対応になったのかはわからない。 察するに、「うるさい」「気持ちわるい」「こわい」などの苦情があったり、増えたりしたのだろう。 場合によっては市議を通じてかもしれない。 最近わかったのだけど、行政というのは、苦情に対して、とても弱い組織である。 そして、缶の抜き取りは、厳密に言えば、違法行為。 ここまで揃えば、僕が行政マンでも、同様に取り締まりを強化するという方向で動く。 だから、遵法という意味で、行政の対応は正しい。

しかし、一部の人の不快感で、一部の人にとっての死活問題を絶ってしまってよいのか、という点には、とても気持ちわるさが残る。 記事では増加にした売却額(市の収入)にしか触れられていないが、もちろん、パトロール人件費など支出も増えていることだろう。 これまで保たれていた、ある意味でのバランスが "仲間たちが窃盗や万引に走らないか心配だ" が示唆するように崩れ、追加のコスト(防犯、社会保障など)も見込まれるかもしれない。 そして、彼らが失うのは、僅かな収入源だけでなく、記事が示すよう、人としての尊厳でもある。

記事に依ると、この取り締まりの強化は、条例が根拠ということ。 条例ももちろん法である。 けれども、この法によって、誰が幸せになるのか、今ひとつ見えない。 苦情を言う人?
「困った時に助けを求められる」というのは、本質的に強者の振る舞いです。

助けを自力で求められるということは、自分の状況を理解する力があり、情報収集能力があり、コミュニケーション能力も十分で、人的な資源にも恵まれている、ということです。ついでにいえば、自分の弱さを認められるくらいにまでは、強い人です。

弱い人には、そうした能力や素質を育むための環境がありません。だからこそ、自力で頑張ろうとして、より苦しい方向にハマっていってしまうわけです。

・苦しいときに助けを求められる人は、強い人です。弱い人は、そもそも「助けて」と言えません - まだ東京で消耗してるの? http://www.ikedahayato.com/20131213/1588182.html
苦情を言える人は十分に強い人。 もう少しの想像と忍耐の力があったら。 もちろんこれは条例を制定した方々にも通じることですが。 (そしてきっと僕もいろんなところで、想像力が欠けているだろう。)

うーん、とっても難しい。
すごい消化不良だし、考えれば考えるほど頭が痛くなる。 
「持っていていいよボックス」とか?

では。