豊橋市議の長坂です。
佐原市政の計画と判断、まだしも良心的でした。

さて、三遠ネオフェニックスを運営する株式会社フェニックスの優先株を
豊川市が保有していたことが、3月の東愛知新聞記事(後述)で明らかになりました。

これまで民間企業であるフェニックスの経営について本ブログで記すことを控えていました。
しかし、行政がそれなりの株を保有していたとなれば異なります。



豊橋市の新アリーナは佐原市政の際、
スポーツ用品などを展開するゼビオグループの会社(クロススポーツマーケティング社:以下、XSM社)による「民設民営(但し場所は公有地の豊橋公園)」で協議が進んでいました。

しかし、令和元年7月に下記理由で「協議打ち切り」。
〇協議対象者(長坂注:XSM社)からの回答は、三遠ネオフェニックスが豊橋市をホームタウンとして、新アリーナを 30 年間使い続けるという協定を本市と(株)フェニックスとの間で結ぶことを条件として、基本協定の締結を行うとしたものでした。

〇本市は、本来、協議対象者とその協力企業でもある(株)フェニックスとの間で交わされるべき協定に本市が関わるものではないと考えており、その点について今後協議を継続しても考え方の溝を埋めることは難しいことから、基本協定を締結することは困難であると判断し(以下略)
https://www.city.toyohashi.lg.jp/33840.htm 
令和元年9月の市議会(定例会)では、もう少し詳しく。
◎文化・スポーツ部長
(略)協議対象者からの回答は、本市とフェニックスとで、新アリーナを30年間使い続けることに関する何かしらの協定を締結する条件つきで、基本協定を締結するとの内容でございました。(略)

 続きまして、(2)協議対象者であるクロススポーツマーケティング株式会社と協議が成立しなかった理由についてでございます。協議対象者が基本協定締結の条件として示した内容につきましては、本来ならば、協議対象者とその協力企業である株式会社フェニックスの間で交わされるべきものであり、本市がかかわるものではないと考えております。
https://ssp.kaigiroku.net/tenant/toyohashi/
「(フェニックスが)新アリーナを30年間使い続けること」に、
豊橋市とフェニックスが「何らかの協定」をすることが、XSM社からの条件であった、と。

逆に言えば、XSM社としてはフェニックスが新アリーナを30年間使い続けられるかどうか、
即ち新アリーナに施設利用料を払い続けられるかを(大きめの)リスクとして捉えた、
(だから、行政である豊橋市との協定(≒約束)が欲しかった)と解せます。

スポーツ施設の運営事業者から、このリスクはとても大きく、
人口約200万、札幌市のドームですら、日本ハムファイターズの移転で、大変なことになっています。



新アリーナは実質的にフェニックスのために作られることから、
新アリーナの収支・経営はフェニックスに強く頼る一方、
フェニックスが払えるのか、払い続けられるのか、が不透明です。

協議打ち切りから4年経ち、今年(令和5年)6月に示された、
新アリーナ計画の中間報告では、貸館収入1.52億円のうち、
8000万円以上がフェニックス
(Bリーグ)で試算されています。

収入の半分以上がフェニックスであり、
フェニックスが新アリーナを使わ(使え)なくなれば、
赤字分、豊橋市の負担が増す懸念は大いにあります。

この新アリーナ中間報告に関する市議会(委員会)では、
この金額をフェニックスが払えるかを、フェニックスに確認していない
と言うことで、計画に不安しかありません。

現在、豊橋市総合体育館を使用しているフェニックスより、
総合体育館が利用料として受けているのが年1300万円ほど。

豊橋市の後援が理由で、半額の減免があり、
正規料金では2倍の2600万円です。

フェニックスは利用料が年1300万円から8000万円以上と、
6倍以上となって大丈夫なのでしょうか




そのフェニックスの経営状況です。
チームの経営状況はBリーグサイト(下記URL)にて公開されています。
https://www.bleague.jp/about/management/ 

昨期(2021-22シーズン)フェニックスは、売上(営業収入)が約8億円
売上の内訳は、入場料が約8千万円スポンサー収入が約5億円、その他が約2.2億円です。

昨期の赤字(純損失)1.3億円により、1.1億円を超える「債務超過」となりました。
「債務超過」は、現行のB1ライセンスルールでも1発アウトが記されています。
https://www.bleague.jp/news_detail/id=264293
(ご参考:「B.LEAGUEクラブライセンス交付規則」p230 純資産基準)

昨期は、コロナによる特例措置で、債務超過での判断は免れました。

しかし、この債務超過が今期(2022-23シーズン)でも解消されない見込みであることが、
冒頭の東愛知新聞記事で明らかになりました。
フェニックス株の売却損1115万8600円
予算など26議案可決 豊川市議会が閉会
(略)
市側は「優先株100株を保有している。フェニックス側から債務超過になっており、昨期は1億3000万円の赤字だったことから、株主構成を見直し増資などをしたいとの申し出があり売却を決めた」と答えた。「売却損は1115万8600円。購入費1200万円は親会社オーエスジーから受けた2000万円の寄付を充てた(長坂注:購入は平成21年頃)(略)2026年の新B1への入会には経営の立て直しが重要課題となっており、全面的に協力が必要と判断した」と説明した。(東愛知新聞 23.3.24.)
この時期に並行して、フェニックスは次の2023-24シーズンのB1ライセンスに関し、債務超過も指標となっている「財務基準」が理由で、第1回判定で決まらず、第2回判定に持ち越しとなっていました。

Bリーグの島田チェアマンが、第2回判定の結果発表に合わせて、御自身のブログに
オーナー側の多大なるご支援」と記しています。
(フェニックスを名指ししていませんが「財務基準で苦しんでいたクラブ」は3者、そのうち「複数(=2者以上)」の話ということです)
非常に気になっているのは、このA東京の施設基準のことよりも財務基準で苦しんでいたクラブです。B.LEAGUEの決算発表時に公開されることなので事実をお伝えすると、オーナー側の多大なるご支援の決断によりライセンスを確保できたクラブが複数ありました。
https://note.com/1105shimada/n/nebd98043f8e2 
他方、島田チェアマンは2月には「三遠ネオフェニックスの変化」と題し、
売上高も12億は大きく超えています」としていました。
売上高も12億は大きく超えています。入場者数は、現在3200人で3次審査基準は超えています。今シーズンから来シーズンに向けて4000人超えを目指していくことになると思います。新B1の有力候補に一気に躍り出たクラブのひとつだと思います。
https://note.com/1105shimada/n/n69f46c7ba490 
「新B1の有力候補に一気に躍り出たクラブ」が、現B1基準でライセンス獲得に難ありとは、理解に苦しみます。



更に、12億円を大きく超えたという売上高について、深めます。

前述の通り、昨期のフェニックスの売上は約8億円で、
うち、入場料が約8千万円スポンサー収入が約5億円でした。

これがシーズン中に関わらず「12億円は大きく超え」たというのです。
つまり売上が4億円以上増えました

入場料や物販収入はシーズン中に確定しません。
そもそも8千万円の入場料が4億円増としたら、6倍です。
普通に考えたら、客数も6倍。しかしそんな状況ではありません。

フェニックスはシーズン当初より、選手だけでなく、
社長やヘッドコーチを始めスタッフも大幅に変わり、
かなり大規模な投資が目されていました。

当然に、先立つものが必要ですが、入場料等はシーズン終わるまで金額が見えません。
しかし、フェニックスに注力する企業からのスポンサー収入なら、理屈が合います。

売上が約8億円から12億円以上と4億円以上増えた
その多くはスポンサー収入と想像できます。

スポンサー収入に関し、下記のフェニックスサイトに、
「パートナー」として記載あるのが約160社です。
https://www.neophoenix.jp/partner/

仮に平均1社100万円としても1億6千万円、
平均1社200万円としても3億2千万円で、
昨期の約5億円と比べても、1億円以上の差があります。

1社とは限りませんが特定企業が飛び抜けて
千万~億単位のスポンサー料となっていると見受けられます。

これは東愛知新聞記事や、島田チェアマンブログとも整合します。

加えて、スポンサー料のみならず、
来シーズンのB1ライセンスが認められたことから、
昨シーズンの債務超過1.1億円が、今シーズン終了までに回避できたことが推し量られ、
資本(増資)にも大きな金額が注入されたと思われます。



しかしながら、このような億を超える金額の「支援」が、いつまでできるのでしょうか。
スポンサー料に見合うだけの効果があるのか。
お金を出す会社の株主は、株主利益との兼ね合いを、どう考えられるのか。

島田チェアマンが記されたような一部企業「多大なご支援」に頼る経営は、
今後30年以上に渡り持続可能とは、とても言い難いです。

また新B1に移行しても、競技結果(順位)による降格がなくなるのみで、
経営基準に依る降格はあります
入会後の審査
入会後も毎年、入会時同様の基準に沿った審査を実施します。
(略)
複数年の基準未達があった場合には下位ディビジョンへの降格となります。
(略)
(資金繰り等に重大な問題がある場合には3期または2期未達でなくても降格する場合があります)
https://www.bleague.jp/new-bleague/regulation/ 
もちろん、札幌ドームのようにホームアリーナの変更も30年間ないとは言えません。

フェニックスに大きく頼る新アリーナ計画は、リスクが高過ぎます。
少なくとも4年前そのように、民間企業であるXSM社は判断されたようです。

では。