豊橋市議の長坂です。
ぼくは怒っています。

豊橋市長選挙に立候補してる浅井よしたか氏のこんなツイートを見つけました。
201103_Scr01
この部分です。
豊橋市民一人当たりの税金は17万2,000円中核市平均より1万7,000円も割高です。さらに、この2年間で5,000円も増額しています。
もやっとしました。
しかし、これだけでは何のお金のことを言っているかわかりませんでしたが、浅井氏が話している動画を見つけました。以下は書き起こしです。
例えば、愛知県全体の人口は今でも増加している。
それから、市を一つ一つ見ても、豊橋と同じ中核市は、豊田とか岡崎。
岡崎も豊田も人口が増えてますよ。合併した後もですよ。
合併して増えるのは当たり前だけど。

だから、その結果として、もう実際にみなさんに弊害が出てきている。
豊橋の市民のみなさんが、お一人お一人、税金、市税を払う。630億円くらいです。
その平均ひとり当たり17万2千円払っている。17万2千円、覚えといてください。

しかし、中核市の平均というのは、同じくらいの規模ですよ、15万5千円です。1万7千円高い負担をしている

これがこの2年間の間に、豊橋の中では5千円、また増えた。
2年前は16万7千円くらいだったわけですね。
5千円増えた、なんで増えるんですか、これ。
簡単なことですよね、人が減るんだから、一人あたりの負担は増える
だから人口は維持して、増やさなきゃいけない。
細かいデータは後で示します。まずは概要を。

豊橋市が一人あたりの市税が高いのは、市民ひとりひとりががんばっているからです。
具体的には、会社が稼ぎ、それに応じた税金を納め、
市民の所得も高くそれに応じた税金を納めている、これが主な要因です。

そして、中核市では豊田市がダントツトップで高いです
これはもちろん、世界的自動車メーカー本社の影響です。
岡崎市も豊橋市より一人あたりの税金(市税)高いです。
この時点で、浅井氏の話が、滅茶苦茶だとお察しいただけるかと。

人口が少ない(減った)から、市税の一人あたり平均が高い、そんなことありません。
人口が減れば、納税者も減り、それに応じて市税(総額)も減ります

まだしも浅井氏が、名古屋市長のように「市税(市民税)の減税」を公約にしているのであれば、話はわかります。でも、そのような公約を僕は把握していません。

そして調べられた範囲では、豊橋市を含め、少なくとも中核市では、市民税(個人)の税率等はどこも同じようです(標準の均等割3500円、所得割6%)。



(以下、数字的な間違いを見つけた方、ご指摘お願いいたします。)

浅井氏が「630億円」という市税(歳入)の主な内訳と、
H29決算での中核市平均の割合(%)は、次の通りです。
  • 市民税(個人): 36.4%
  • 市民税(法人): 8.6%
  • 固定資産税: 40.7%
  • 軽自動車税: 1.4%
  • 市たばこ税: 4.6%
  • 都市計画税: 6.8%
  • 事業所税: 3.0%
基本的な税金の計算方法は全国共通です。
そのため、大きな変動要因になりうるのは、次の通りです。
  • 市民税(個人):納税者の数・所得
  • 市民税(法人):法人の数法人の利益
  • 固定資産税:面積・地価
  • 軽自動車税:台数
  • 市たばこ税:本数
  • 都市計画税:固定資産税に連動
  • 事業所税:事業所の数規模
ご覧いただければ、その市がどれだけ「稼ぐまち」か、どうかの影響が大きいことがわかります。
納税者(≒勤労者)や納税する法人の数が多く、個人の所得や法人の利益が高いところが市税総額も高くなり、
結果的に「一人あたりの税金(市税)」も高くなります。



より具体的な数値を示していきます。
まず浅井氏のおっしゃる「630億円」「平均1万7千円」から、これは一般会計の平成29年度決算を元にした数字であるとわかりました。

中核市の揃ったデータは下記の中核市市長会サイトにありました。
https://www.chuukakushi.gr.jp/introduction/yoran.html

浅井氏のおっしゃる「豊橋市民一人当たりの税金」は、
市税/人口(住民基本台帳登録人口)で計算できました。
左が豊橋市、右が中核市平均です。
  • H30決算:¥173,802 ¥154,077
  • H29決算:¥172,199 ¥151,374
  • H28決算:¥169,206 ¥152,457
  • H27決算:¥167,672 ¥150,809
  • H26決算:¥168,599 ¥152,831
浅井氏の「1万7千円」に一致したのが、平成29年度決算。
この年の豊橋市の市税総額は、63,723,895千円のため、こちらも「630億円」にほぼ一致します。

同じ年で、豊田市 ¥249,723円岡崎市 ¥180,210です。
豊橋より人口多く、増えてますが、豊橋市よりも税金高いです。

中核市平均 ¥151,374が、浅井氏の「15万5千円」と4千円も違うのは、氏の計算違いと思われます。
通常この場合の「中核市平均」を出すなら「各市の平均値」を更に平均すると認識しています。

しかし「中核市の平均市税」/「中核市の平均人口」という計算をしてみたら、
¥154,191円となり浅井氏の「15万5千円」に近い値が出ました(残り1千円の差の理由はわからず)。

「さらに、この2年間で5,000円も増額」と、浅井氏がどうして2年前と比較しているのかも疑問でしたが、
見れば、2年前との比較が一番差が大きく、敢えて1年前(H28)でも3年前(H26)でもなく、2年前を選んだのかな、とも邪推されます。



そして、テータ的な根拠を得るため、中核市それぞれの「人口一人あたり市税」と、
様々な数値がどのくらい関係性が強いのかを調べました。
(具体的には、エクセルのグラフ機能で、近似直線にて「R-2乗値」を見ました)

関係がありそうな「人口」「15-64歳人口比率」「65歳以上人口比率」「人口密度」「人口伸び率」「市民税(個人)」「市民税(法人)」「固定資産税」などで、最も数値が高く関係性が強かったのが、「市民税(法人)」でした。

具体的には「R² = 0.636」。他はこんな感じです。
  • 人口: 0.215
  • 15-64歳人口比率: 0.3446
  • 65歳以上人口比率: 0.3494
  • 人口密度: 0.0031
  • 人口伸び率: 0.0645
  • 市民税(個人): 0.3949
  • 固定資産税: 0.516


改めて僕が何に怒っているか。

「多選」は佐原市長の「公約違反」であり、「ユニチカ跡地」は佐原市長の「失政」と私も認識しています。
これらの責めは、多くが佐原市長にあり、市長選挙でその判断を市民に問うのは、私もその通りだと思います。

しかし、今回の「市民一人当たりの税金」は全く違います。

これは市職員はもちろん、市民ひとりひとりのがんばりの賜物です。
それを「弊害」と批判材料にすることに、本当に腹が立ちます。

はっきり言って、佐原市長の成果でもなく、
誰が市長でもその権限だけで簡単にどうにかできるような数字でありません。

そして、数字の捉え方が根本から間違っており、全く逆の見方・解釈をしています。

もし本当に心から「人口が減っているせいだ」と考えているなら、
10年以上も県議をやっていながら、はっきり言って論外です。

もし敢えて、市民・市政を貶めるために、間違った解釈とわかった上で、
開陳しているなら「論外」以上に怒れます。

市民のがんばりを何と思っているのか。



最後に、私の解釈や数字の扱い方、
少なくとも大きな方向性で間違っていないと思いますが、
もし私の勘違いがあれば、ご指摘大いに歓迎いたします。

むしろ勘違いであった方が嬉しいです。

では。