豊橋市議の長坂です。
カレーは甘口です。

さて、地元紙(東愛知新聞)にも掲載された、浅井氏・佐原氏双方の後援会が作成したというチラシの内容について、事実確認を含め、多くご質問をいただきます。
選挙戦の様相も一変 食い違うユニチカ問題|東愛知新聞
http://www.higashiaichi.co.jp/news/detail/7015 
私の事実認識と照らし合わせて、まとめましたので、ご覧ください。
(正直、結構大変でした。有権者のご判断お役に立てば幸いです)

※あくまで私の事実認識のため、法律や裁判お詳しい方からのご教授、歓迎します。



なるべく、客観・中立的に書いているつもりですが「完全な客観・中立などない」と考えています。
そのため、現時点での長坂の考え方について、まとめておきます。ご参考くださいませ。
  • 司法の判断が出たので、確定判決に記載の部分はそれが事実(63億円でなく、21億円)。
  • 今後、誰が市長がなっても今回の裁判結果は変わらない。
  • 確定判決において、2014~15年時点でユニチカに土地の返還請求を怠った佐原市長の違法性が認められた。これについて佐原市長は責任のとり方(主として人事的な)を示すべき。
  • 併せて、上記の「違法性」に至った経緯を明らかにし、原因を究明し、再発防止策を講じるべき。
  • 上記「違法性」を含む一連に関し、佐原市長は市民に謝罪をした方がよい。
  • 佐原市長が「土地の返還請求」をしなかったことや「63億円を請求せずに」控訴したことについて、市民の方が「豊橋市民の利益のために動かない市長」と思われることは否定しない。
現時点での、私の主な考え方は以上です。



では、まず浅井氏後援会が作成したとされるチラシ
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ユニチカ跡地問題ってよくわからないんですが?
現在の「豊橋市政で、どんな弊害が起きている」のですか?

この「3期以上続ける弊害3点」が端的に現れたのが、豊橋市が最高裁でも敗訴した「ユニチカ跡地問題」です
「3期以上続ける弊害3点」と「ユニチカ跡地問題」の因果関係は不明。豊橋市の「敗訴」については、長坂も同じ認識。

長くなりますが、事実関係を説明します。豊橋市は戦後の復興期に8万坪の土地を無償提供するなどして、ユニチカを誘致しました。その時、ユニチカと豊橋市の間には、「土地は無料で提供しますが、使わなくなったら返してもらいます」という契約を結びました。
⇒概ね、同じ認識です。

それから70年近くたった2015年に、ユニチカは「閉鎖し撤去する」という文書を市役所に提出し、ユニチカの社長も挨拶に来ました。
2015年でなく2014年。文書は下記。「撤去」という言葉はない
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本来なら、ここで佐原市長は「契約書の通り、土地は返してもらいます」とか、長年のユニチカの貢献度を考慮して、「議会にも図ってお返事します」と言うべきでした。ところが、佐原市長は肝心の土地の返還を求めませんでした。さらに、こういった事実を議会にも市民にも公表しませんでした。その結果、ユニチカは土地を売却して63億円の売却代金を手にしたのです。
判決が確定した現時点においては「佐原市長は「契約書の通り、土地は返してもらいます」(略)と言うべきでした。」は、その通り。他の部分についても、概ね同様の認識。(図って⇒諮って、が正しいかと)

63億円もの価値のあるものを手放したんですか?

豊橋市の対応に対し、住民グループは2016年8月に豊橋市長に対してユニチカの土地売却代金63億円を請求することを求める住民訴訟を起こしたのです。その結果、地裁は「土地は豊橋市のものだから、豊橋市はユニチカに63億円全額請求をせよ」という豊橋市全面敗訴の判決を下しました。
⇒「63億円もの価値のあるものを手放したんですか?」に関して、結果として手放していない。確定判決に従ってユニチカに約26億円(約21億円+遅延損害金)を請求し、ユニチカから豊橋市に入金済。他の箇所は長坂も同じ認識。

住民側の全面勝利ですか、そんなことがあったんですね。

豊橋市とユニチカは名古屋高裁に控訴しました。しかし、高裁は豊橋市に対し、土地売却代金63億円全額請求は「ユニチカへの影響が極めて大きい」と減額し、21億円余をユニチカに請求するよう命じたのです。
⇒「住民側の全面勝利」に関して、名古屋地裁(第一審)判決についてはその通り。他の箇所も、概ね同じ認識。

63億円が21億円に減額されて、豊橋市は負けたんですね。

そうです。これに対し、2019年7月、住民、豊橋市、ユニチカがともに最高裁に上告しましたが、最高裁は、住民側、市長側双方の上告を退けました。それにより、豊橋市はユニチカに約21億円を請求するようにと命じた二審名古屋高裁判決が2020年7月に確定しました。
⇒「豊橋市は負けた」も含め、長坂も概ね同じ認識。

最高裁の判決ですから揺るがないですね。豊橋市は三連敗ですね。

そうです。問題を整理すると「ユニチカの土地(の一部)は豊橋市の財産であった」にもかかわらず、佐原市長はユニチカに売却代金を請求しなかった。さらに、佐原市長はユニチカ側との交渉を議会にも市民にも公表せず、独断でユニチカが土地を売却することを黙認、擁護した。佐原市長は一貫して「豊橋市の土地ではない」と市の財産を減らすような主張をし続けた。
⇒「佐原市長はユニチカに売却代金を請求しなかった」に関し、結果として確定判決に従い、約26億円を請求している。2014~15年当時のことであれば、請求すべきは「売却代金」でなく「土地」そのものの返還。他については「三連敗」を含め概ね同じ認識。
※「財産」「独断」については次のチラシにて後述。

佐原市長は市長として豊橋市の財産を守らなきゃ。

恥ずかしい裁判でした。佐原市長は一度も市民の立場を考えず、「自分だけが正しい」という独善的な傾向に走り、政治の独走化を招いたのです。
佐原市長が守ろうとしたのは、プライドだけです。
市長は最高裁の判決後も、正式な謝罪は議会にも市民にもありません
⇒「市長は最高裁の判決後も、正式な謝罪は議会にも市民にもありません」に関しては、同じ認識。他の箇所は、経緯の説明でなく、文書作成者の主張であるため、事実認識の判断をしません。

民間企業であれば株主は黙っていないでしょうね。

それでも、住民側の裁判によって21億円余の豊橋市の財産が守られました
住民の行為は豊橋市の誇りと言えますが、佐原市長は「市長が市の財産を減らす結論を求めて争った事件として豊橋市政の歴史に刻まれる」不名誉を負ったのです。民間企業であれば株主は黙っていないでしょうね。
⇒「住民側の裁判によって21億円余の豊橋市の財産が守られました」に関しては、同じ認識。他の箇所は、文書作成者の主張であるため、事実認識の判断をしません。

豊橋市民は「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われそうです。

豊橋市には、市長の独善を許す邪気が存在しています。一言で言えば、現在の豊橋市政は予算、人事を握る市長に職員、議員が忖度(そんたく)せざる得ない状況に陥っています。それは3期12年にわたる多選が生み出した弊害で4選など問題外です。何処かの誰かに「豊橋市民はボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われそうです。
⇒文書作成者の主張であるため、事実認識の判断をしません。



続いて、佐原氏後援会作成とされるチラシ
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「ユニチカ問題、正しく知ろう」
ユニチカは豊橋市の財産だったの?

違うよ!もともと市の財産ではない
もとは軍用地(国有地)で、戦後復興のさ中、失業対策や商工業の振興のため、地域を挙げての工業誘致活動の結果、国から直接ユニチカ(当時の大日本紡績(株))に移転・譲渡された土地なんだって。登記簿も調べたけれど、市の財産だったことはなかったよ。
⇒事実を組み合わせ書いてあるがミスリード
下記の3点から、土地について、豊橋市が「何らかの権利」を有していたと言える。
  • もとの軍用地(国有地)は「売払」され、「払下げに要する費用は豊橋市が負担(したと思料される)」(注1)
  • 契約の当事者である、豊橋市とユニチカが「豊橋市に返還する」という条文について、当時に合意できている(ユニチカに完全な土地の権利があるのであれば、何があっても返還する必要がない。また「返還(返す・還す)」という言葉が使用されている)。
  • 今回の住民訴訟の確定判決において、裁判所が、ユニチカの土地売却行為は豊橋市の「返還請求権を侵害するものとして、不法行為に該当する」とし、間接的に豊橋市の「返還請求権」を認めた。
登記(所有)の記録がないのは事実であるが、それが即ち豊橋市の財産ではなかった(財産に関連する権利が全くなかった)とは言えない。

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(注1)住民訴訟に先立つ、住民監査請求の結果(豊橋市監査公表第2号)に次のような記述がある。

「本件工場用地は、昭和 29 年3月 20 日売払を原因とし、所定の手続きにより同月 30 日付けで農林省から大日本紡績株式会社へ移転登記が行われた(p5)」

本件工場用地の払下げに要する費用は豊橋市が負担したものと思料されるが、費用負担の具体的な方法については、監査の時点では資料が見当たらないため不明であった(p6)」
https://www.city.toyohashi.lg.jp/26312.htm 
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使わなくなったら全て豊橋市に返す契約だったと聞いたけど?

ユニチカから使わないという意思表示がされた部分は返すという契約だった
昭和26年、豊橋市とユニチカで結んだ契約には、土地のうちで「将来、使用する計画を放棄した部分は、豊橋市に返還する」と書かれていたんだ。これは、工場などを建設して操業を始める前に「使わないよ」との意思をあらわした部分の土地は返す、ということで、「使わなくなったら全部返す」という意味ではないよ。
⇒確定判決が出た現時点においては、同じ認識。
裁判前や裁判中は、ここがまさに争点であったため、「使わなくなったら全て豊橋市に返す契約だった」かどうかの確定的な解釈はなかった(という認識)。

じゃあ、ちゃんと契約通りだったの?

当事者の豊橋市とユニチカは契約通りだったと認識している
昭和26年に工場が完成して操業も始まったし、建物のない部分も緑地や運動場が作られて土地を全部使用しているので、豊橋市もユニチカも契約通りだったと認識していたよ。
⇒同じ認識であるが、ミスリード
「当事者の豊橋市とユニチカは契約通りだったと認識している」は今回の裁判のポイントでない
双方が「契約通り」と認識していても、裁判所は、ユニチカの土地売却行為は豊橋市の「返還請求権を侵害するものとして、不法行為に該当する」と認め、「契約通り」ではない、という結論になった。

裁判で21億円を返還請求すべきと判決が出たのはどうして?

契約の目的に沿って使用された土地かどうかで認識に差があった
高等裁判所の判決では、
  • 全部を返還せよということではない
  • 工場を建設し操業を行った土地は目的通り使用されたので返還義務はない
という豊橋市の基本的な考えが認定された。豊橋市は緑地や花壇、運動場などは従業員の福利厚生のため、工場の操業に欠かせない一体のものと考えていたけれど、裁判所はそれらは工場を建設・操業するための施設としては評価できないとしたんだ。だから、その部分を計算した約21億円を豊橋市はユニチカに請求すべきだという判決が出されたんだよ。
⇒高等裁判所の判決文によると2箇所ある「豊橋市(控訴人)の主張」は、いずれも「返還すべき土地はない」である。そもそも、契約の解釈という「認識の差」を司法で解決するための裁判であるため「認識に差」があるのは当然

また、「高等裁判所の判決では、
  • 全部を返還せよということではない
  • 工場を建設し操業を行った土地は目的通り使用されたので返還義務はない
という豊橋市の基本的な考えが認定」の記載について、上記の「・」は、判決の趣旨の一部であり「豊橋市の基本的な考え」でない
豊橋市の基本的な考え(主張)は、「返還すべき土地はない」であり「全部を返還せよということではない」とは開きがある。また「豊橋市の主張」の中に「福利厚生」という言葉もない。

高裁判決の全文
http://nagasakanaoto.blog.jp/190808.html


でもさ一審どおり63億円請求できたほうが良かったんじゃないの?最高裁まで上告したから42億円も損しているよね。

行政は損・得だけで動いてはいけない
行政は、企業に対しても、たとえ一人の市民に対しても交わした約束は誠実に守って、信頼される存在でなければならないよ。今回は約70年前の古い契約だったけど、当時の状況を詳しくきちんと調べ、当時どんな約束をしたのかを明らかにして、誠実に約束を果たす義務があるんだ。だからこそ、豊橋市、ユニチカ、原告の皆さんがとことん納得を得られるよう最高裁判所に最終判断を求めたんだよ。
⇒確定判決において、そもそも佐原市長がユニチカが土地を売却する前に、土地の返還請求を怠ったことの違法性が認められた。
「約束を誠実に守る」ということであれば、やるべきは、2014~15年時点に「当時の状況を詳しくきちんと調べ、当時どんな約束をしたのかを明らかにして、誠実に約束を果た」し、ユニチカへ土地の返還を請求すべきであった。

市長はこのことを独断で決めたの?

まさか!市長が独断でどうこうできるものじゃない
今回の契約は70年前のもの。市長は市の担当部局の中で引き継がれてきた考え方と、専門家の意見も聞きながら、行政の行うべき業務を市の最高責任者として指示しているよ。
⇒市長(豊橋市)が独断で決めました。
「佐原氏個人が独断(脳内で・一人で)で決めたの?」ということであればNOです。
しかし、市長(豊橋市)は、ユニチカの土地売却意向や、裁判の控訴・上告について、市民や市議会へ意思決定の前に説明したり、意見を求めたり、諮ることなく、決めました。

ユニチカは、戦後直後の厳しい困難な時代にいち早くこの地に進出して工場を操業し、たくさんの雇用を生んで豊橋市の失業対策や商工業の振興に大きなチカラになったんだよ。だからこそ、慎重に一つ一つ当時の約束を法律の下に明らかにして誠実に向き合っていく事が大切だよね。
⇒ユニチカの経緯や実績は「だからこそ」と「慎重に一つ一つ当時の約束を法律の下に明らかにして誠実に向き合っていく事が大切」という理由にならない。「行政は、企業に対しても、たとえ一人の市民に対しても交わした約束は誠実に守って」という、前出の文章の趣旨と異なる



以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
(ぼくもがんばりました、あなたもがんばりました)

では!