豊橋市儀の長坂です。
急転直下。

豊橋市が、新アリーナの建設・運営について、基本協定締結のために協議を進めていた、ゼビオグループのクロススポーツマーケティング社(XSM社)に対し、その交渉相手(協議対象者)としての地位を取り消すことを発表しました。

※本ブログの日時を、便宜的に7月12日23:30に設定していますが、実際の更新は、13日に日付が変わって以降ということを付記します(議員からの情報発信解禁が24:00 のため)。

豊橋の方はもちろん、今後、全国で新アリーナなどの整備を検討、進められる予定の自治体やチームの関係者にもご覧いただきたい内容です。



以下、市役所から提示された資料です。
要点をテキストでも抜粋します。
190712s_01
報道発表資料 令和元年7月10日(水)
令和元年7月12日 (金)記者会見後解禁

市長記者会見 『豊橋市「新アリーナ」の建設・運営に関する民間提案募集』における協議対象者との詳細協議の打ち切りについて

『豊橋市「新アリーナ」の建設・運営に関する民間提案募集』において、平成30年9月より選定した協議対象者と事業実施に必要な諸条件について、詳細協議を続けてまいりましたが、協議が成立せず基本協定の締結に至らなかったため、協議対象者としての地位を令和元年7月9日に取り消しましたので、このことについて記者会見を行います。

(略)

(5) 協議対象者
事業者名:クロススポーツマーケティング株式会社 
190712s_02
報道発表資料 令和元年7月12日(金)

(略)

『豊橋市「新アリーナ」の建設・運営に関する民間提案募集』において、下記理由により協議対象者としての地位を取り消しましたのでお知らせします。(略)

◯本市は、(略)最終の基本協定書案を提示し、6月末を期限として回答を求めました

◯協議対象者からの回答は、三遠ネオフェニックスが豊橋市をホームタウンとして、新アリーナを30年間使い続けるという協定を本市と(株)フェニックスとの間で結ぶことを条件として、基本協定の締結を行うとしたものでした。

◯本市は、本来、協議対象者とその協力企業でもある(株)フェニックスとの間で交わされるべき協定に本市が関わるものではないと考えており、その点について今後協議を継続しても考え方の溝を埋めることは難しいことから、基本協定を締結することは困難であると判断し、『豊橋市「新アリーナ」の建設・運営に関する民間提案募集要項』に基づきクロススポーツマーケティング(株)との詳細協議を終了し、協議対象者としての 地位を取り消したものです。


ここに示されている情報の限りにおいて、今回の豊橋市の判断は適切であると、私は考えます。

いくつか補足説明をします。

まず昨夏にXSM社からいただいた提案、こちら正確には、XSM社フェニックス社山下PMC社、この3社の連合体からの提案として、いただいていたものです。

連合体として提案をいただく場合、1社を代表者とし、他を協力企業などとします。
今回の場合、XSM社が代表企業となり、フェニック社は協力企業という位置付けで、いっしょに提案をされました。

その提案の中において既に、
市(185日程度)、三遠ネオフェニックス(50日程度)、協議対象者(130日程度)で年間利用日数を割り振り、年間を通じた運用を行う。
旨のご提案をいただいていたことが、2018年9月21日付けで、市役所より提供された議会資料に記載されています。

つまり本来であれば、年間50日程度を30年間、フェニックスが利用し続けること(そして、それに応じた金額をフェニックス社がXSM社に支払うこと)は、ともに提案を出された、XSM社とフェニックス社で先に固めておくべき話です。

それをこのギリギリの段階※になって、
三遠ネオフェニックスが豊橋市をホームタウンとして、新ア リーナを30年間使い続けるという協定を本市と(株)フェニックスとの間で結ぶことを条件
とXSM社が、豊橋市に対して条件提示をしてくることは、これまで積み上げて来たであろう交渉を、その大前提からひっくり返す話です。
※XSM社からこの条件提示があったのは、回答期限日であった6月28日(金)と、市の担当者より議長の前で聞いております。

先の資料で、
協議対象者とその協力企業でもある(株)フェニックスとの間で交わされるべき協定に本市が関わるものではない
と、豊橋市が認識を示しているように、XSM社とフェニックス社の、民間企業同士で交わすべき約束について、行政機関である豊橋市が関わるべきでない、という判断は、まさにその通りです。

"もし"、これが協力企業にフェニックス社がいなければ、また話は違った可能性もゼロではないでしょう。



一方、この新アリーナ建設・整備に関して、豊橋市はこれまでXSM社に1円も支出していません。
逆に言えば、XSM社に、何らかの履行義務があるわけでもありません。

もちろん、提案を出した以上、その提案を前提に「誠実に対応」する、ということは求められますが、単純に行ってしまえば、豊橋市とXSM社の間で、契約の類のものはまだなく、契約成立に至る前に、交渉がまとまらなかった、という民間企業同士では、よくありそうな話です。



今後どうなるか。

少なくとも、XSM社などの提案部分については白紙になります。
具体的に言えば、アイスリンク機能や、30年で60億円、という金額などです。

また豊橋市作成の民間提案募集要項に記されていた、2021年9月の供用開始(新アリーナのオープン)も、現実的に不可能でしょう。

本日の記者会見にて、
「ことし11月ごろまでに整備のスケジュールなどの基本的な考えを示したい」
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20190712/3000005639.html
という市長の発言があったようですが、話をどこまで遡るのかの検討はこれからでしょう。

募集要項の軽微な変更なのか、建設候補地(豊橋公園)からか、あるいは、5000席対応は既存の総合体育館の大規模改修とし「新アリーナ」は市民利用を主体とするものとするのか、など。



一方で、今回の交渉打ち切りに関連して、豊橋市が見直さなければならないものがあります。

今年2019年3月に策定された
新アリーナを核としたまちづくり基本計画 2019-2023」です。

この基本計画は、XSM社提案の新アリーナを前提にして策定されています。
各興行等の開催日数や来場者数の想定は、新アリーナに類似した施設であるゼビオアリーナ仙台や近隣の体育館などの実績を参考にして(略)算出
プロスポーツ 相撲、Vリーグ、アイスホッケーアジアリーグなど
この計画は既に今年2019年4月からスタートしています。

過去に私は、この点を懸念しており、今年2019年2月の委員会で、「本計画の策定(完了)は、協議対象者との基本協定が締結された後にするべきだ」と、豊橋市の認識を問いましたが、
新アリーナの検討とともに本計画でお示しした基本理念、基本方針の実現に向けて準備を進めたいと考えておりますので、年度末(※長坂注:2019年3月末)までに策定したい 
という考えを変えずに、先走って策定してしまい、今に至るということになっています。

そもそも、昨年2018年10月には、
本計画は、新アリーナを整備した場合に、その新アリーナを活用したまちづくりを進めるための目指す姿をお示しするものです
この計画自体は、あくまで新アリーナを整備することを前提につくったということでございます
と答弁をいただいているため、この計画の有効性すら、疑われます。

このような事態になったため、豊橋市は、まずは最低限この計画を「凍結」させ、今後「廃止」または「改訂」する意思を明確に示すべきです。

またこの「新アリーナを核としたまちづくり基本計画」策定のため、昨年度882万円の予算が付いていたことを付記します。



これを良い機会と捉え、新アリーナについてその必要性の再検討から、
総合体育館の大規模改修や、アクアリーナや地区体育館などの体育施設はもちろん、ライフポートやアイプラザなどの文化施設ホールと併せて、総合的に考え直していただくことを、強く強く望みます。

では!

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(追記)続報
豊橋の新アリーナ協議打ち切り記者会見、報道まとめ - 愛知豊橋市長坂なおと のblog
http://nagasakanaoto.blog.jp/190713.html