豊橋市議の長坂です。
うちは仏教で、幼稚園はカトリックでした。

さて、政治・行政の「政」の字は、
「まつりごと」とも読むように、
太古の昔、宗教・祭礼と政治は、
切っても切れない関係でした。

「やべえ!あの人の言う通りに雨降った!
 神ってる!いや、神だ!!」

(当時の)人智を超えた「予言」ができる人は、
その畏怖を、統治に用いたことでしょう(たぶん)



その後、長い歴史を経て、日本は現在、
「政教分離」となっています。
それもかなり厳格です。

一方で現代でも、イギリス(イングランド)のように
「国教」がある国もあります。

日本のような「政教分離」が、必ずしも、
世界で統一されている概念ではありません。



自分のように行政の近くにいると、
「政教分離」に、複雑な気持ちを抱くこともあります。

例えば、昨年の熊本地震。

被害を受けた著名な建築物として、
熊本城と阿蘇神社が、頻繁にテレビに映ったことは、
記憶に新しいです。

その復旧については、行政の対応に大きな違いがあります。

熊本城の復旧には、数百億単位の公金が用いられることになりました。
一方「宗教施設」である、阿蘇神社(拝殿)の復旧には、公金が用いられません。

更に厳密には、阿蘇神社の中でも、重要文化財である楼門などには、
公金が用いられる一方、文化財の指定がされていなかった拝殿などは、
神社が寄附を含む自己資金で、復旧することになります。



同様に、豊橋市でも神社のお祭りである「豊橋祇園祭」や「鬼祭」に、
公金は用いられていません(と聞いています)

そう「豊橋祇園祭」は、1万発を超える打ち上げ花火の全てを
民間資金(協賛や寄附金、桟敷席などの売上)でまかなっているいるのです!

すごい!!!

このことだけでもぼくは、豊橋市民の地力というか、
誇れることだと思っています。

※例えば、近隣の岡崎市では、
「花火大会煙火打上委託料」として、
4276万円が計上されています(H28当初予算)

もちろん、豊橋市も「政教分離」を守りつつ、
できる範囲での応援をしようという姿勢が見られます。

例えば、広報支援。
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先日、ブログで取り上げた東三河(広域連合)の観光ポスターも、
宗教施設である豊川稲荷が堂々と掲載されています。
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忖度?偶然??東三河ポスター第2弾、完成! - 愛知豊橋・長坂なおと のblog
http://nagasakanaoto.blog.jp/170323.html
伊勢市の伊勢神宮や、出雲市の出雲大社、
世界遺産を目指す長崎県のキリスト教会群
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」などをはじめ、
全国の自治体が、行政(特に観光行政)における宗教施設の取り扱いについて、
それなりに気をつけながら対応しているのではないかと、推察します。



豊橋市でもシティプロモーションの合い言葉として、
「ええじゃないか豊橋」という言葉が使われています。

豊橋市役所サイトにも掲載されている
「豊饒御蔭参之図(ほうねんおかげまいりのず)」
は、次のように解説されています。
「ええじゃないか」の起源については諸説ありますが、慶応3年7月に三河国渥美郡牟呂村(現在の豊橋市)に伊勢神宮外宮・内宮と伊雑宮(いざわのみや)のお札が降ったことから始まったという説が有力です。(略)

恐らく、実際に繰り広げられた「ええじゃないか」は、この絵に描かれた以上に熱狂的で、喧噪なものであったと思われますが、そこには一定の宗教性を媒体として封建的な秩序からの解放を願う極めて多数の民衆のエネルギーの爆発をみることができます。この民衆による騒乱が続く中で、時代は幕末から明治へと大きく転換していったのです。
 http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/82850046537.htm|三重県総合博物館
漏れ聞くところだと、市がこの言葉を採用するにあたっては、
当時、大なりか小なりか議論や懸念があったらしいのですが、
現在の豊橋市の公式見解は、次の通りです(平成27年12月 議会答弁)
歴史性・宗教性を踏まえた「ええじゃないか」という言葉の認識についてでございます。
議員御指摘のとおり、確かに、ええじゃないかは、一定の宗教性も含んだ歴史上の象徴的な出来事をあらわす言葉であると認識しております。 しかしながら、豊橋におきましては、この「ええじゃないか」という言葉を「ええじゃないか豊橋」という言葉に置きかえて使用しております。

これは、ええじゃないかを民衆運動の名称としてではなく、何ごとも肯定できる前向きな考え方や、瞬く間に伝播する圧倒的な力をイメージする言葉として捉え直し、市民、事業者など、各主体が一体感を持ってプロモーション活動を行うための合い言葉として、設定したものでございまして、ええじゃないか豊橋という言葉に宗教性はないものと認識をしております(略)

一方、ええじゃないか豊橋は、宗教的な出来事に由来する言葉をプロモーション活動に使用しているだけのものでございますので、政教分離の観点からは、問題となるものではないと考えております。

次に、(3)今後の運用におけます留意点についてでございます。
先ほども申し上げましたとおり、ええじゃないか豊橋は、あくまでもシティプロモーションの合い言葉でございますので、オール豊橋で盛り上げていくためにも、今後も行政、民間を問わず、幅広く使ってまいりたいと考えております。

しかしながら、宗教性に関する御懸念も理解できますので、一定注意しながら活用していきたいと思っております。


ところが、豊橋市役所で5月22日に開催された
「ええじゃないか豊橋まつり」に関する
豊橋まつり振興会総会で、
「総合プロデューサー」である菅原浩さんから、
参加募集ポスターの発表に際して、驚きの発言(以下全て要旨)が。
このポスターを持って、ご祈祷
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 - 東愛知新聞(5月23日付)

「な、なにを仰っているのだ・・」
聞いた瞬間、正直頭を抱えました(心の中で)。

政教分離については、
市立体育館建設の際に行われた地鎮祭で裁判となったり(津市)、
神社祭礼への職員の公費による玉串料の支出が、
議会で取り上げられ、その後、自主返納になるなど(世田谷区)、
薄氷な事案です。

とは言っても菅原さんの「リップサービス」である可能性も拭えなかったので、
かなり無理して、手を上げて聞きました。
長坂「先ほど~というご発言がありましたが、本当にご祈祷に行かれるのですか?」

菅原「行きます」
更に頭を抱える(心の中で)
長坂「行政という立場上、だいじょうぶなのでしょうか?」

佐原市長・豊橋まつり振興会会長「市役所と振興会は、ちがうから」 
うわぁ・・・
※豊橋まつり予算8830万円のうち、6200万円が豊橋市補助金
(平成29年度予算)



総会の終了後、担当職員に聞いたところ、
「総合プロデューサー」菅原氏のご祈祷発言については、
市の職員も事前に聞いておらず、
過去にも、ご祈祷に行っていないということでした。

今年もおそらくは「リップサービス」で終わると思いますが、
もし本当に、ご祈祷に行ってしまっていたら、
(特にそれを公費から支出していたら)
これまで市民や職員が、築き上げていたものが、
覆水盆に返らないようなことになっていたかもしれません。



余談ですが、新聞記事中の
出席者からは「踊りを簡単にしてもらえないか」という声も出た。
声の主は私です。

実際、豊橋まつりに関して一番いただくご意見が、
「踊りが難しい」ってことなんですよね・・・
では!