豊橋市議の長坂です。
豊橋を流れているのは豊川(とよがわ)です。

さて、以前ご紹介したこちらの講演会のため豊川市(とよかわ・し)へ行ってきました。
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「大型SCの進出とまちづくりへの影響」藻谷浩介氏講演
スズキ豊川工場・14万m²に、巨大ショッピングセンター(SC)が進出?
-雇用・税収で街が賑わうのか? 地元商店街に及ぼす影響は?-

豊川市白鳥町で操業するスズキ(株)豊川工場は、2018年7月に生産を終了し、工場は閉鎖されます。
その広大な敷地面積・約14万m²について、地権者のスズキ(株)が、跡地の優先交渉権者をイオンモール(千葉市)に決定したことが8月末に公表され、豊川市のまちづくりにとって大きな課題になっています。
しかしながら同地は、都市計画法の「工業専用地域」に指定されており、住居や店舗を建てることはできず、大規模な商業開発の為には、商業系への用途地域の変更が必要になります。
この課題に対して今、私たち地元市民はどう考えるべきでしょうか?

そこで今回、国内ほとんどの市町村に自ら足を運び、まちづくりに関する調査研究を行っている藻谷浩介氏をお招きし、各地で起こっている同じような事例を踏まえながら、豊川市のような地方都市が抱えている課題についてお話しいただきます。
ぜひご聴講下さいますようご案内申し上げます。

講師
株式会社日本総合研究所/主席研究員
会場は満席。
先入観かもしれませんが、とてもピリピリした雰囲気が漂っていた気がします。

藻谷さんと言えば、数字に強く豊富な統計データと、全ての市町村に足を運んだという、理論と実地の双方に裏付けされた説得力が、お話の魅力です。 その分、身も蓋もないことを歯に衣着せずに仰り、その様子は「狂犬」と畏敬される木下斉さんと業界の双頭です。

冒頭に、数字を使った頭の体操的なやり取りがされました。
日本の殺人件数が増加していると思う人はパー、減少していると思う人はグーを出してください。 はいっ!
ところが、最前列に座った目の前の方が手を上げない、
私、言いましたけど、手を挙げないなら講演やめて帰りますよ
藻谷さんのお話を聞くのは、2回めか3回めなので、この経験もはじめてではないのですが、それでもひやりとします。

さて、グーとパーはおよそ半々…この結果に藻谷さんも多少身構えたのではないかと思います。 実際、その少しあと、講演の序盤で、
あれ、おかしいな。いつもなら、このあたりでものすごくみなさん納得されるのですが・・・
的なご発言あり、途中、客層に苦戦されている様子も見受けられました。



非常に有意義で、またも目鱗なお話だったので、逐次書きたいのですが、そうするときっと最後まで読んでもらえないので、終盤で映し出された講演の「まとめ」を先にご紹介します。
日本では、現役世代の減少が生産ではなく消費を下げている

☆ 現役世代が減っているので、労働者も減っている
 → ところが日本は世界で一番、工場の機械化・自動化が進んでいるので、労働者が減っても生産は落ちない

★ 現役世代が減っているので、労働者も減っている
 → その分、企業は払う人件費の総額(雇用者報酬)も減る
 → その分、現役世代を顧客にした商品の売り上げも減る
  …車、住宅、衣類、家具、食品、いろんなものが頭打ちに

☆ それでも生産を落とさない商品は、値崩れしていく
 → そのことを「デフレ」と呼んで日銀のせいにする

★ 実は一部の高齢者には貯金がたくさんあるのだが、そうした人に限って死ぬまでお金を使おうとしない… 
その上で、藻谷さんが仰ったのがタイトルのことです。
正確な記録を取っていないので要約ですが、
イオン(ショピングセンター)をつくっても、もうほとんど市外(主に豊橋)からの消費は取ってきてしまっているので、豊川市全体の小売販売額は増えない。

そもそも、生産拠点である工場(工業用地)を、消費の地であるショッピングセンター(商業用地)にして、市民の所得、強いては市民税が増えるわけがない。

もちろん、スズキの工場は大きく、跡地も広大だから同じような工場が来るのは無理。 それでも例えば、鳥取市では旧鳥取三洋電機跡地に、せんべい工場(源吉兆庵)を誘致できた。 菓子工場って実はいいんですよ、人手が必要だから雇用にもつながりますし。

だから、豊川市もまずは工場誘致をすべき。 このご時世、工場誘致は大変だけど、1号線と東名沿いであんないい工業用地は全国的にもなかなかない。あそこで工場が誘致できないなら、全国どこでもできない。

工業用地から商業用地への用途変更が必要だから、豊川市の都市計画審議会や、たぶん豊川市議会を経る必要があるはず。
もうこの話が藻谷さんから出たとき、それまでは、「数字とグラフばかり並べて、小難しいわけわからん話ばかりする偉そうなやつだ」という心の声が周りから聞こえてきそうだったのが、

「大先生から、イオン反対のお墨付きをいただいたー!ひゃっほーい!!」と、一気に場の雰囲気が代わり、最後にはみなさんほこほこ顔で会場をあとされた気がします(個人の感想です)。



豊川市がすべきこととして、他に藻谷さんが仰られたのは、
  • 外国人観光客に向けた豊川稲荷の活用(京都で外国人観光客が最も来てるのは伏見稲荷)
  • この地域はおいしいものがたくさんあるのだから、地の物を地で消費
個人的に後者については、そんなにおいしいのなら、都会などもっと高く売れるところで売って「外貨」を獲得すべきと思いますが(豊橋のエリート農家からの受け売り)。



さて、ここから藻谷さんのお話を順を追って、掻い摘んでお伝えします。
「つまらない」話になって行きますので、数字に強い方だけ見ていただければと存じます。

まず、お話されたのが、販売面積・販売額・就業者数・売り場効率(販売額/販売面積)の関係。
統計(商業統計)が2006年までしかないので、そこまでの数字ですが、

およそ販売面積は大きく増加、販売額は横ばい、就業者数はやや増加、売り場効率は大きく減少、というのが、2006年までおよそ30年ほどの全国的な傾向でした。

その後、イオンが出店した地域/しなかった地域の比較で、岡崎市・豊川市・豊橋市のグラフが示されました。
そして、その傾向が強かったのが、岡崎市>豊川市>豊橋市の順です。



続いて示されたのが、マネタリーベース・株式時価総額・GDP・個人消費額・総所得の関係、というか無関係性。

まず、日本のマネタリーベースは、ずっと微増傾向であったのが、この数年で急増。 「異次元の金融緩和」、通称・黒田砲です。

しかし、株式時価総額はそれと関係なく上下。 現在(2015年)の金額は、バブルを上回っています(そして、2016年、減少し始めている、つまり2015年がピークとも)。

更にしかし、GDPはこの20年ほど一定。 おどろくほど一定。 藻谷さんいわく「『長期的な低迷』と言われるが、ぼくから言わせれば『長期的な安定』だ」と。 つまり、株式時価総額とGDP(いわゆる景気)は関係なし。

そして、個人消費も一定。 この話が小売販売額の一定に繋がります。 個人消費が一定なのは、総所得が一定だから。うそ。 正確に言えば、総所得はやや減少傾向で、一番の理由は現役世代(≒就労者数)が減っているから。 そこで広がった個人消費と総所得のギャップを埋めているのが、年金収入。



そして、恒例の「人口の波」のグラフ。
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)
2010-06-10

これについては、藻谷さんのこの本をお読みいただくか、「人口の波」「デフレの正体」「人口オーナス」などで、グラフを画像検索されてみてください。

ざっくり言えば、団塊の世代(1945-49年生)が1100万人いるのに対し、平成生まれはその半分の550万人/5学年、ほど。

そして、1960年に6000万人いた現役世代(15-64歳)は、その後8700万人(1995年)をピークに、2010年には8200万人と既に減少は始まり、2040年には1960年を下回る5800万人へ。

一方、75歳以上は、1960年には160万にしかいなかったのが、720万人(1995年)⇒1400万人(2010年)⇒220万人(2040年)と着々と1960年比14倍の増加・・・ひいー!

あ、でも平成生まれが高齢者になる頃には、昭和生まれ(特に団塊ジュニア以上)がごっそりこの世から去っているので、彼らはきっと年金もらえるだろうとも、仰っていました。



そして、ここでようやく「まとめ」に入り、会場のみなさんほくほく顔になって行くのでした。

これから、豊川市長と豊川市議会は大変かと存じます。
豊川(とよがわ)放水路の対岸から、行末を注目いたします。



ちなみに、豊橋については藻谷さん、

「豊橋市が豊川の客を取り返そうとイオンを誘致するならまだわかるのだけど、ホント豊橋は独特というか、よくわからない・・・」

の旨、仰っていました。
実際、豊川のイオン出店について、よく聞く豊橋民の感想は、

「これまで岡崎のイオンまで行っていたのが近くなる!」

ですので、豊川イオンできて小売販売額が落ちるのは、豊橋市より岡崎市になるかと存じます。

では!