2016年6月2日付けで、住民監査請求のあった、ユニチカ跡地の件ですが、その監査結果が7月25日付けで公表されました。
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結果は「棄却」

これを請求者側が不服とする場合、舞台は裁判所、行政訴訟に移ります。
住民訴訟とは、住民が自ら居住する地方公共団体の監査委員に住民監査請求を行った結果、監査の結果自体に不服、又は監査の結果不正・違法な行為があったにもかかわらず必要な措置を講じなかった場合などに裁判所に訴訟を起こすことができるという制度である。 行政訴訟であり、そのうちの客観訴訟の1種である民衆訴訟にあたる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/住民訴訟 
「棄却」以外の場合には、「勧告」があり、このときは、市役所などに必要な措置をするように「勧告」することになります。

監査の結果は公表されており、こちらでご覧になれます。
http://www.city.toyohashi.lg.jp/26312.htm
A4 9枚程度です。

これまでの経緯は、こちらです。
http://nagasakanaoto.blog.jp/tag/ユニチカ



監査結果の文書は以下のような構成になっています。
第1 監査の請求(請求書の中身)
1.請求の趣旨
2.求める措置
3.監査請求人 住所、氏名(省略)
4.事実を証する書面
(添付書類の表題のみ)

第2 監査の結果
1.請求の受理
2.監査の実施
3.監査の結果
(1)事実確認について
(2)監査委員の判断
この中で、一番最後の「3.監査の結果」、特に「(2)監査委員の判断」について、少しご紹介します。

まずは事実確認

昭和25 年12 月5日付けで、ユニチカ前身の大日本紡績株式会社取締役社長、豊橋市長及び同市議会議長との間で、愛知県副知事を立会人として交わされた「覚書」より
同敷地は取敢ず日本政府より乙(編注:豊橋市)が借受け乙が日本政府より払下を受け甲(編注:大日本紡績株式会社)に所有権を移転するまで甲に無償貸与する 日本政府より乙に払下げを受けることが可能となった場合には可及的速に乙の負担に於いて其の払下を受け直ちに乙より甲に無償提供し甲の所有に移す」と、
また第13 条には、「甲は将来第3条(1)の(イ)の敷地の内で使用する計画を放棄した部分は之を乙に返還する」と規定されている。
続いて、大日本紡績株式会社取締役社長と豊橋市長の間で、豊橋市議会における昭和26 年4月2日の議決を経て、同月3日付けで締結された「本件契約」にも同様に、
同敷地はとりあえず日本政府より乙(編注:豊橋市)が借受け乙が日本政府より払下げを受け甲(編注:大日本紡績株式会社)に所有権を移転するまで甲に無償貸与する 日本政府より乙に払下げを受けることが可能となった場合には可及的すみやかに乙の負担においてその払下げを受け直ちに乙より甲に無償提供し甲の所有に移す 日本政府より直接甲に払下げる場合にはその払下げに要する費用は乙の負担とする」と、
また第12 条には、「甲は将来第3条(1)の(イ)の敷地の内で使用する計画を放棄した部分は、これを乙に返還する」と規定されている。
また別の事実確認として、
旧土地台帳によれば、本件工場用地は昭和28 年12 月25 日付けで八木勇(豊橋市曙町字松並1)他を所有者とする保存登記及び農林省を所有者とする強制譲渡による移転登記が行われている
とも。



そして、監査委員の判断
本件契約第12 条は、「甲は将来第3条(1)の(イ)の敷地の内で使用する計画を放棄した部分はこれを乙に返還する」と規定している。 これは、「敷地の内」で使用する計画を放棄した「部分」はこれを乙に返還すること。 つまり、本件契約の趣旨を踏まえ、工場を建設し、操業した後に文言どおり敷地の一部返還を定めた条項であると思料される
ポイントは、「操業した」と「一部変換」でしょうか。

本件契約第12 条「大日本紡績株式会社は将来第3条(1)の(イ)の敷地の内で使用する計画を放棄した部分はこれを豊橋市に返還する」との規定は、当時の状況を鑑がみると全国各地から引手数多の大企業であった大日本紡績株式会社が全面撤退する事態など想定できず、それを前提とした条項を設けることなど考えられるものではなかったため、本条は全面撤退を意味したものではなく、敷地の内で使用する計画がなくなった部分が生じた場合を想定したものと理解でき、操業中における敷地の一部返還を定めたものであるとの市の解釈は妥当なものと判断する。
全面撤退が想定されないから、操業「中」で敷地の「一部」という解釈でしょうか。
今みたいな右肩下がり(人口が)の時代とちがって、先人は楽観的・牧歌的であった様子。

返還とは元の所有者に返すことを意味するものだが、本件契約第3条(1)(ハ)後段の規定により、本件工場用地は日本政府より直接、大日本紡績株式会社に払下げられており、豊橋市は本件工場用地の所有権を有しておらず旧土地台帳に豊橋市の登録も見当たらない。 したがって、使用する計画を放棄した部分が出たとしても、文言どおり豊橋市に返還することはあり得なかったものと考えられる。 しかしながら、本件契約の締結時においては、本件工場用地の払下げに関する国の最終的な方針が示されておらず、払下げに要する費用は豊橋市が負担するとしていたこともあって、とりあえず返還という語句を用いたものと考えられる。
契約に書いてありながら、「あり得ない」「とりあえず」という解釈・・・

民法における物権的返還請求は、自己の所有する土地を他人が権原なく占拠する場合に、所有物返還請求権により、土地を取り戻すことができるとされるものであるが、本件工場用地の所有権は所定の手続きを経て大日本紡績株式会社が得たことについては事実確認ハで述べたとおりであり、そもそも豊橋市は本件工場用地の所有権を有していないのであって、本件契約第12 条に基づく返還義務が生じているとはいえない。
うーん、つまり、所有権が大日本紡績株式会社移った時点で、当時から「返還義務」が生じない、意味をなさない文言だったということ??

本件契約第13 条にある「本契約に定めのない事項あるいは疑義を生じた事項については本契約の趣旨に従って誠意をもって甲乙協議の上実行する」とした規定に基づいて、敷地返還の協議を申し出なかったのかと主張するが、本件契約の趣旨は既に述べたとおり工場の早期の完成とその達成のため豊橋市の全面的な協力であり、本件契約には事業撤退について規定されていないことからも当該申出が本件契約の趣旨に沿うものでないことは明らかである。したがって、敷地返還については「本件契約に定めのない事項」には当たらないとものと判断する。
「本件契約に定めのない事項」とは、なんなのか。

そして、まとめ的な一番最後の「判断」
請求人が主張する債務不履行に基づく損害賠償請求権については、既に述べたとおり本件契約第12 条が操業における敷地の一部返還について定めた規定であり、しかもその一部返還はユニチカ株式会社が豊橋市に対し自ら意思表示した場合に限られるため、ユニチカ株式会社の債務不履行は生じておらず、これに基づく損害賠償請求権を豊橋市は有していない。したがって、請求人の豊橋市長はユニチカ株式会社に対し、損害賠償請求等の金銭請求を怠っているとの主張は認めることができない。


新しい事実が出てこない限り、事実部分は変わらないでしょうから、もし裁判になったら、このあたりの「判断」が争点になるのでしょう。

では!