先日、恩師である下村健一さんと2年ぶりくらいにお会いしました。 下村さんってこんな方。
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下村健一 / Kenichi SHIMOMURA
シモムラスイッチ編集長
  • TBS報道局アナ(スペースJ、等)を15年務めた後、フリーキャスター(筑紫哲也NEWS23、サタデーずばッと、等)10年。
  • その後、内閣審議官(2年任期満了後は民間契約アドバイザー)として計約900日、民主・自民の3政権で政府の情報発信に従事。
  • 現在は慶應義塾大学、関西大学、白鴎大学で教鞭をとる他、小学教科書の執筆など、幅広い年代の子ども達の教育に携わる。
  • 世間の難しいコミュニケーションを橋渡しする《コミュニケーター》として働くことがモットー。
 - 下村健一のプロフィール | シモムラスイッチ[下村健一公式]
http://shimomuraken1.com/ken1
僕が特にお世話になったのは、この頃
[Ⅲ]2000-2010 市民メディアアドバイザー、フリージャーナリスト《誰もが発信できる新時代に伴走》
 2000年10月 衛星ラジオ「BS-academia」“学生ニュース”アドバイザーに就任(~03.3)
僕のメディア・リテラシー、情報発信の基礎は、下村さんに鍛えていただいたと言っても過言ではありません。



さて、そんな恩師に久々にお会いするということで、著作を読みました。
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その中で、この一冊、

とても印象深い一節があったので、少し長いですが引用します。

ときは2012年の春夏。 野田政権。
この頃、下村さんは、内閣広報室審議官として、首相官邸で働き、政府の情報発信に携わっていました。
官邸前金曜デモ、政治を動かす

 こうして事実上の原発ゼロ社会には突入したものの、このまま真夏の最も電力が使われる時期も乗り切れるのかどうかの確証は、相変わらず得られぬまま、次のタイムリミットが刻々と迫っていた。 今度は、6月半ば。(略) 野田総理は会見で「大飯は再起動すべきである」と言明、 続く16日、8回目の4大臣会合で、ついに「大飯原発3,4号機の再起動」は最終決定された。
 しかし、この動きは、官邸のすぐ外側で、もう一つのアクションを引き起こした。 すでに細々と始まっていた毎週金曜夕方の「原発再稼働反対」官邸周辺デモが、この発表をきっかけに一気に拡大したのだ。 (略) 僕の職場である "本府" ビル前から地下鉄「国会議事堂前」駅までの歩道も完全に人で埋まり、仕事を終えて帰宅する政府職員は皆、グルっと迂回するルートを通るしかない状態となって、誰一人、無関心ではいられなくなった。
 このデモ行動の一つのクライマックスは、7月29日の夜だった。 集まった市民の数はとても歩道では収まりきれなくなり、ついに車道に溢れだして、国会正門前は60年安保の時以来であろう大群衆で、文字通り埋め尽くされた。 ただ樺美智子さんが命を落とした52年前と決定的に違うのは、その場の《暴力》がないことだった。
 この毎週の官邸前デモのパワーは、明らかに官邸の政治家たちや、隣の議員会館にいる与野党議員たちに、ボディブローのように効いていった。 どうせ一過性さ、とタカをくくっていたら、いつまでも人が減らない。 非暴力に徹しているから、排除もできない。 これだけ大規模になったので、さすがの大手メディアも取り上げる。 その報道を見て、それぞれの議員の地元選挙区でも、支持者から「お前はどういう考えなんだ」という突き上げが出てくる。 「原発、やっぱりゼロにしていく方策をちゃんと考えないとまずいよな」という空気が、色々な党の政治家たちの中にジワジワと広がっていった。
 そしてついに8月6日、ヒロシマ原爆の日。 野田総理が広島市内での記者会見で、「将来、原発依存度をゼロにする場合にどんな課題があるか」を関係閣僚に検討させる、と言明した。 明らかに、選挙でもない時期に、歩道上の一人一人の声が、国政に影響を及ぼした。 僕も約30年、色々な市民運動を見たり関わったりしてきたが、こんなにも現実に政治に対して力を発揮しているシーンを目撃するのは初めてだった(今までは外側にいたから、気付かなかっただけかもしれないが)。
いかがでしょう。

この一節が、僕の印象に残った理由は、「ああいうデモって意味あるんだろうか」 と常々考えていたから。 その中で、中の人から、このような発言が出てきたことはとても驚きでした。

一方、その少し前に、こんな記述もありました。
 ついに再稼働は実現せぬまま、5月5日はやって来た。 東京電力や、経済界の真ん中付近で働いている僕の友人たちは、呑んでホンネが出て来ると、
「枝野は最悪だ!」
 と酷評した。

 一方、脱原発を真剣に希求する市民運動は、この日各地でお祝いのイベントを開いた。
「枝野、政府、原子力ムラが再稼働を画策する中、私たちの力で原発ゼロを実現した!」
 という喜びの声が溢れ、「エダNO!」というプラカードも踊っていた。

 このプラカードを掲げる人は、枝野さんを首にしたら、現実的に誰を次の経産大臣に想定しているのだろう? どう考えても、もっと脱原発運動にとってネガティブな人の名前しか、僕には浮かばなかった。 よりマシな代案をリアルに持たない反対運動って、もっと悪い展開へと自分たちを導くだけではないのだろうか?(略) 脱原発運動が消えて喜ぶ者に、経産大臣を任せるな。 この単純明快な筋に、「エダNO!」のプラカードはどう考えても反していた。


サイレントマジョリティと、ノイジーマイノリティという言葉があります。 前々回の衆議院選、反対運動がこれだけ盛り上がっていながら、もっとも影響を受けたであろう福島県ですら、原発推進派の議員が、ことごとく勝利したことは、結構衝撃的でした。

また、前回の衆議院選において、憲法改正や集団的自衛権は明らかに争点であり、それを進めようする党に、たくさんの議席を与えたときから、今の状況は十分予想できた。 デモに参加するような方々は、政治意識の高い方々なので当てはまらないと思うけど、やっぱりまずは、デモする前にちゃんと選挙に行ってほしい。 デモするよりかかる労力ははるかに少ないし、効果的。 豊橋市議会選挙のように、選挙前の候補者時点で、過半数が特定の党の関係者であったというなら、話は違うかもしれないけど。 (余談だけど、だから、地方議員選でも、知り合いや人柄だけでなく、候補者の政党とかもちゃんと見た方がいいと思う)



効果的、といえば、驚いたのはこの話。
安保法制のすったもんだよりも、新国立競技場の建設予算に関する問題のほうが安倍政権の不支持率増大の寄与率は高いということ、また担当大臣の下村博文さんの悪印象急上昇で各種基礎調査での「嫌いな政治家」2位に急上昇するなど、影響がどんどん大きくなってきています。

 - 新国立競技場が「もんじゅ」「えふいち」処理みたいになってる(山本一郎) - Y!ニュース
 http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20150714-00047514/
現政権に与える影響力や、活動の拡がりという意味では、新国立競技場についての反対運動した方が、効果的なのではないだろうか・・・

あと、下村さんの本見てわかったのは、デモするなら、多くの住民の目に触れることよりも、その相手に活動が「見える」「聞こえる」ということが大事っぽいので、東京であれば官邸周辺などでよいのでしょう。 しかし、地方のみなさまに於かれましては、公園や駅前などの街頭で活動されるよりも、該当案件の議員が(市政案件なら市議が、国政案件なら国会議員が)いそうなところで、活動されるのが、効果的なのではないかと存じます。

改めて、首相官邸をはじめ、政治の中枢がどのように動いているのかを知るのに、とても良い本です。


そしてこちら、下村さんの最新刊。

メディア・リテラシーや情報の受発信について、いろいろ参考になると思います。 平易な文章でわかりやすく、僕らが下村さんから学んだ基礎が、2時間程度でさくっと読め、おすすめです。

では!