昨日、豊橋おとなり、愛知県田原市の市議会議員選挙の告示日(公式な選挙運動がスタートする日)だったのですが、公示日に全員の当選が決まるという事件が起きました。 どういうことかというと・・・
150126東愛知A3田原blog
18人が無投票当選 市制施行以来初めて 田原市議選
 
任期満了に伴う田原市議会議員選挙は25日告示された。予想された18人が同日午前に立候補を届け出た。この立候補者数は定数と同数。立候補受付が締め切られた同日午後5時までに19人目の出馬者が現れなかったため、18人が無投票当選となった。市議選の無投票は同市が合併によって市制を敷いた2003(平成15)年以来初のケースだ。(略)

夕方5時に「無投票当選」が確定すると、各選挙事務所で当選を祝うバンザイなどをした。
同市ではもちろん前例がなく、県内でも過去10年間に1例のみという
当選された方々は、確かにバンザイと思います。 一方、昨年、地方議員や地方議会の情けない姿が数々露呈されました。 選挙というフィルターを通さずに立候補者の全員が議員になるというのは、ある種の怖さがあります。

先の国政選挙で、与野党第1党の自民党・民主党の候補者がともにおらず、公明党・共産党・生活の党・次世代の党(田母神候補)しか投票先、選択肢がなかった東京都・北区。 その北区選出の都議会議員が、「選挙とは、ろくでなしの中からもっともマシな人間を選ぶ作業である」と自身のブログで記していました。 これを言葉通りに返せば、無投票とは最下位のろくでなし中のろくでなしまで全員議員になってしまうことなのです。

 - 選挙とは、ろくでなしの中からもっともマシな人間を選ぶ作業である | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイ http://otokitashun.com/blog/senkyo/5234/

全国的に、無投票当選が増えています。 それでも人口が6万人を超える田原市でこういうことになったのは、とても驚きです。 ちなみに、日本の自治体1,741のうち、田原市の人口は446位で、全体を100としたら、およそ25位。 つまり、人口規模だけで言ったら、全国の自治体の4分の3が無投票になってもおかしくないのです。 乱暴な議論ですが。

実際、2013年に行われた町議会・村議会の選挙のうち、およそ4つに1つが無投票だったということです。
舞台は『あなたが住む町』の議会です。 以前は『議員の数が、ちょっと多すぎではないか』という声を耳にすることもあったのではないでしょうか。 市よりも人口が少ない町や村。 議員の定数は、20年ほど前、全国で4万人余りでした。

それが、『平成の大合併』で町村の数が半分以下になりますと、町村議会の議員の定数は大幅に減って、去年(2013年)は1万人余りになりました。 すると、この少ない議席をめぐって、選挙戦は激しくなるはずです。 果たしてそうなったのでしょうか。
 
その年に行われた町村議会議員選挙のうち、無投票となった選挙の割合を見てみましょう。 平成の大合併がほぼ完了した平成18年。 無投票の選挙は、わずか7.1%でした。 この数字、以前より大幅に減っていまして、やはり、選挙戦は盛んになっていたんです。
 
ところが、その後、無投票の選挙は大幅に増えています。 去年は、3倍の23.4%。 町村議会議員選挙の4分の1近くが、無投票となりました。
 
議員の定数は減り続けているのに、どうしてでしょうか。

 - “人口減少”議会 - NHK 特集まるごと  http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2014/05/0518.html
中には、こんな珍事が発生している村もあります。
無投票増加:村議会「再選挙まずい」ライバルが候補者集め - 毎日新聞 http://senkyo.mainichi.jp/news/20141224k0000m010090000c.html

 地方議会の担い手が不足し、議員選挙で候補数が定数を満たさない事態も起きている。昨年の長野県野沢温泉村議選では定数8に対し候補は7人で、欠員1のまま無投票当選となった。24日に発足する第3次安倍内閣は地方創生を唱えるが、地域によっては衰退が激しく、自治が成り立たなくなっている。

 村議選告示は昨年3月19日。その6日前の事前審査に6陣営しか来なかった。総務省選挙課によると、告示で欠員が定数の6分の1を超すと、立候補者は無投票当選となるが、再選挙を実施して速やかに欠員を補う必要がある。定数8なら候補が6人以下で再選挙が課され、村政の混乱は必至だった。
消滅可能性都市、という言葉があります。 2010年と比べて2040年までに20-39歳の女性が半分以上減る自治体を指して、日本創生会議という団体が使った言葉です。 しかし、2040年を待たなくても、既に崩壊しかかっています。 「地方自治は民主主義の学校」と言われます。 その民主主義の根幹が選挙です。 その選挙が成立しないということは、もう地方自治が成立していないと言っても過言ではないでしょう。



悲観的なことばかり言ってもしょうがないので、少しでも候補者が増えそうなことを考えてみました。

1. 住民票の制約をなくす。
地方議会の議員に立候補するには、その選挙の3ヶ月以上前から、その市町村に住んでいる必要があります。 これがあるから、例えば市外にいる田原出身者が、「地元がそんな事態になってるなら、今すぐUターンしてひと肌脱ごう」と思っても、叶わないのです。 居住実績を重視するかは、住民が判断すればいいので、この規制、外しちゃっていいんじゃないですか? ちなみに、この「3ヶ月以上前~」は、なぜか首長(市町村長や知事)には適用されていません。 だから宮崎県知事だったそのまんま東さんが、都知事選に立候補できたりするわけです。

2. 半議半X的な生き方のススメ
半農半Xという言葉を受けて。 そもそも町村議員の報酬は、兼業を前提としています。
町村議会議員の報酬は、全国平均で月額20万円余り。 中には月10万円という自治体もあり、いわば兼業を前提にした報酬となっているんです。 - 前述のNHKサイトより
だったら、地域おこし協力隊のようなU・Iターン策として、町村議員も選択肢に入れて行く、というのはどうでしょう。 地方議員をしてその地域を知りながら、起業準備みたいな。 「地元を知らないやつが、いきなり議員をできるか!」という声も聞こえそうですが、今、国が進めているシティマネージャー制度は、都市部の人材をいきなり副町長や副村長に抜擢するという施策なので、それを踏まえればいきなりでも十分できるでしょう。

3. いっそのこと、議員定数を4人にする。
全米で一番住みたい町、といわれるポートランドでは、議員が4人しかいません。 ちなみにポートランドの人口は、約60万。 それでも成立するのは、コミッション制という制度をとっているから。
市民参加を促進するコミッション(Commission)制度

ポートランドは、コミッション制度を採用している米国でも数少ない市のひとつである。市長と4人のコミッショナーが公選され、この5人で構成するコミッションが、日本で言う「市議会」の役割と、行政機関のトップの両方の役割を果たしている。市長は4人のコミッショナーに対し、どの行政分野を担当するかを割当てる権限を持ち、市を代表する立場にあるが、それ以外の権限は、議決権も含め他の4人と同等である。

この5人で議会を開き、その結果を反映させて行政を進めていくので、自治体運営は機動的である。ポートランドと同規模の人口を持つ日本の八王子市の議員定数が40名であるのと比較すれば、この制度が特徴的であることがわかる。市民の側から見ると、どの行政分野をどのコミッショナーが統括しているかがはっきりしているので、その人物の議会での発言を通じて行政運営の方向性が理解でき、自分たちの声を行政に届けやすい。またコミッショナー選挙は市全域がひとつの選挙区であるため、各コミッショナーを有権者全員で審判することができ、一般市民の声が反映されやすいという特徴がある。 

- 市民参加の精神を学んだ米国オレゴン州ポートランド視察―自治体職員研修プログラム「週末学校」 http://www.tkfd.or.jp/fellowship/program/news.php?id=85
「候補者が増える」というのとはちょっとちがいますが、僕はテレビでこのポートランド議会を知ったとき、感動しました。 そして、自分がいかに「議会」や「議員」のあり方に固定観念を持っていたかを痛感しました。

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豊橋でも、4月に市議会選がありますが、まさか無投票になんかなったら恥ずかし過ぎて泣きます。

では!


<参考>
【市区町村】人口・面積・人口密度ランキング - 都道府県市区町村 http://uub.jp/rnk/cktv_j.html