むかしはなしかいえんきだん

 「むかしはなし蟹猿奇談」(尾州名古屋・風月孫助他 文化4年)は,猿蟹合戦(さるかにかっせん)と桃太郎を合わせた仇討小説である。舞台は三河の国吉田(豊橋)である。桓武天皇の時代,伊勢国鈴鹿山に棲(す)む鬼神阿黒王を将軍坂上田村麻呂が退治したが,猿・蟹・猪の三妖怪は妖術を使って,猿は三河の国の石巻山に,蟹は鈴鹿山中に,猪は富士の裾野に住み着いた。しかし,猪は将軍頼朝の時代に退治された。蟹は悪行を悔い改め山を開き柿を植え生業(なりわい)としていたが,猪のことを耳にして不安になり,猿を鈴鹿に呼び戻し,悪行を改めるように忠告したが,猿は悪行を改めず柿を食い散らかし,木上から磐石を投げて甲羅を砕き蟹を殺して石巻山に戻り,黒衣郎山公となった。

 北条時頼の時に,鎌倉の青砥藤綱の一子百太郎は文武に優れた16歳の美少年であった。また,三河国豊川の城主安久美公輔の妹豊姫も文才豊かな美女であった。豊姫は赤岩軍蔵・浜名卯兵衛を供に鎌倉建長寺の入仏供養に参詣した時,以前より豊姫に気のあった赤岩軍蔵が姫を襲うが百太郎はその危機を救った。三河の国東条の城主吉村弾正と石巻山の老猿黒衣郎山公は,豊川城を乗っ取り,黒衣郎山公は豊姫を奪い取った。百太郎は,鈴鹿山中で昔猿に殺された蟹の霊より仇討を頼まれ,豊川城の豊姫のことを知らされ,吉田に引返した。蟹の霊に導かれて百太郎は千年の猿猴を退治し,悪徒を滅ぼし,豊姫を奪還して夫婦となった。物語の中に東三河の地名が随所に登場する。

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このページは、2006年12月発刊の豊橋百科事典を元に作成しています。
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